表題番号:2015B-105 日付:2016/02/25
研究課題脳の性的可逆性と不可逆性の分子基盤
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 教授 筒井 和義
研究成果概要

生殖腺に精巣と卵巣があるように、脳にも雄型と雌型があり、その違いによって、種々の行動に性差がもたらされる。哺乳類や鳥類では、出生前後の一時期に脳が雄型か雌型のどちらかに分化を遂げ、通常、そこで決まった脳の性は固定化されて生涯逆転することはない。一方、魚類の脳は、生涯にわたって性的な可逆性が保持される。このように、脳の性の固定化と可逆性は動物種によって大きく異なるが、その分子機構は未解明である。本研究は、脳の性の揺らぎを抑制する分子基盤を得るために、脳の性の固定化が強いウズラを研究対象にし、脳の性の固定化を規定する分子機構と顕著な性差が認められる生殖行動、攻撃行動、自発運動の性依存的行動パターンが固定化される機構を明らかにすることを目的とした。

本研究により、ウズラにおいて、生殖行動、攻撃行動、自発運動は脳内のステロイド(エストロゲンおよび7α-水酸化プレグネノロン)合成系・作用系により制御され、この制御機構には著しい性差があり、生活史の早い段階の一時期に形成され、一生涯にわたって維持されることを見出した。