表題番号:2015B-104 日付:2016/02/25
研究課題社会環境による生殖行動変容の脳内分子機構の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 教授 筒井 和義
研究成果概要

社会環境の変化によって動物の行動や生殖腺から分泌される性ホルモンの血中濃度が変化することはこれまでに多くの研究者が報告してきました。社会環境の変化というのは、動物が一匹でいる状態からつがいになる、群れで生活していたのにはぐれてしまって一匹になるといった個体をとりまく環境の変化です。社会環境の変化は、視覚や聴覚などの感覚系で受容された後、脳に変化をもたらして動物の生理状態や行動を調節します。人間も社会的な情報によって行動や生理状態は瞬時に変化します。例えば、異性と同性の前では態度や行動が変わってしまうことや、素敵な異性を前にすると性ホルモンの分泌が変化するということは一般的に言われています。しかしながら、それらがどのような機構によって発現されるのかは不明のままでした。

本研究により、異性の存在が、ノルエピネフリンやGnIHを介して、性ホルモンの分泌を瞬時に変化させる新しい神経機構が解明されました。本研究成果は、雌の存在を認知する際に視覚に大きく依存する動物モデルとして、鳥類のウズラから得られたものですが、ノルエピネフリンやGnIHなどの脳ホルモンが多くの動物に共通して存在することから、私たちヒトを含めた哺乳類でも社会的な情報が生理状態を変化させるうえで、同じ仕組みが存在するかもしれません。よって将来的にヒトが一目ぼれするときの神経機構や分子メカニズムの解明に貢献することが期待されます。