表題番号:2015B-074 日付:2016/03/19
研究課題柳田民俗学の組織化に関する通史的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文学部 教授 鶴見 太郎
研究成果概要
柳田国男の民俗学が、「民俗」「郷土」を鍵言葉とし、戦時下急速に組織化されていった背景には、徹底した物証・経験主義に基づく柳田の方法意識に対する賛同が地方の郷土史家たちの間にあったことが大きい。その動向は、柳田によって1930年代に著されたいくつかの「国語」論に明快に表されている。柳田はこの中で、日本語を考える上で、漢字の多用がもたらした意思疎通をめぐる混乱を指摘し、明晰さと旨とする言葉遣いを標榜した。時局用語という形で漢字が氾濫する中にあって、こうした柳田の姿勢に賛同する傾向が、広く地方の郷土史家にあったことが、柳田の民俗学を背後から支えた。