表題番号:2015A-001 日付:2016/04/13
研究課題経済学実験・政治学実験における視線測定器の研究効果を最大限に引き出すための研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 政治経済学部 教授 船木 由喜彦
(連携研究者) 早稲田大学 教授 日野愛郎
研究成果概要
 本研究の特徴は、経済学研究者と政治学研究者が連携して、視線測定器を用いた一連の実験を行うことであり、大学院生の関連研究者・研究協力者と協力しながら、多数の視線測定器を用いた実験を行った。研究代表者と連携研究者は経済学、政治学と専門分野は異なっており、視線測定器を利用した研究の目的は異なるが、研究手法は近接しており、共同で研究することによるメリットは大きい。同時に、船木研究室、日野研究室、田中愛治研究室の博士課程大学院生を中心とする、院生の研究グループを組織し、視線測定器を用いた研究を行った。これにより、研究を進めると同時に視線測定機を用いた実験研究のノウハウの蓄積にも成功した。
 2015年度終了の時点で、視線測定器を設置した専用の実験室を1号館4階に確保することができ、常時4台の新型の視線測定器が利用可能な状態で設置されいる。現在でも、この実験室で多くの研究プロジェクトが展開されている。
 上記のような研究の最大目的は達成されたが、それと同時に研究代表者の具体的な研究課題の達成については以下の通りである。研究代表者の2015年度の研究目的は、実験参加者のリスクの下での選択行動において、最も重要視する情報の研究であった。リスクの下での選択行動におけるリスクに対する評価の行動経済学的な理論は、金銭的成果を重要視するものと、生起確率を重視するものと大別される。どちらをより重視するかを視線測定器によって検証するのが本研究のメインテーマとなる。この問題に関し、従来の実験研究とは異なり、最先端の機器である視線測定器を利用して情報探索行動を分析した。その結果、金銭的成果の大きな場合に対応する生起確率を有意に注視することがわかった。この成果は論文としてまとめられ、実験経済学の査読付き著名学術誌に、現在投稿中である。
 連携研究者は、世論調査において回答者がどのように質問文や回答選択肢を読み、回答しているかについて視線測定器を用いて明らかにする研究を長年続けている。世論調査の研究においては、回答選択肢の提示順序により回答分布に偏りが出る「順序効果」(order effect)が指摘されてきたが、本研究では、回答者の視線データをさらに収集することにより、提示された回答選択肢に視線が偏るか否かの検証を続けた。従来の回答データと視線測定器を基に得られる視線データを組み合わせることにより、従来の世論調査研究では明らかにできなかった回答行動を発見することができた。同時に回答表のどの部分を注視するかという点と回答データの関係についても探索的な実験を行った。以上の実験結果は現在、とりまとめ中である。