表題番号:2014K-6217 日付:2015/04/09
研究課題神経前駆細の形態・移動を制御する新規分子群の機能解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 人間科学部 教授 榊原 伸一
研究成果概要
 ヒトを含め哺乳類の神経幹細胞は発生期~成体期まで継続的に脳内に維持され,放射状細胞突起や多分化能を特徴とする。一方,神経幹細胞から産生される増殖性のニューロン・グリア前駆細胞は系譜がより制限されるが,目的の部位に向かう高い遊走能を持ち,神経発生過程だけでなく,神経変性病態での髄鞘再形成など脳機能再生の観点からも重要な細胞である。しかし神経前駆細胞(NSPC)の形態維持や遊走メカニズムの分子的基盤には未解明な部分が多い。我々が神経系前駆細胞に発現する新規遺伝子として同定したMG46Inkaドメイン(神経堤細胞の移動に機能すると考えられているInka1と類似の機能不明ドメイン)を持つことから、細胞移動などに関与することが推定される。in situ hybridizationの結果から,NSPCの形態や遊走に関わると考えられるMG46 mRNAは胎生期延髄,脊髄の腹側部脳室周囲のオリゴデンドロサイト前駆細胞に発現し,移動を終えたオリゴデンドロサイトやニューロンでは発現が消失する。EGFP-MG46in vitroNSPCに強制発現させると、EGFP-MG46は細胞膜直下に集積し,過剰な数の糸状仮足(filopodia)の形成を促進した。またin vivo強制発現によりNSPCはアクチン骨格の変化により細胞形態が球状に変化させ,細胞移動に異常が見られた。以上の結果からMG46NSPCの遊走を制御する新たな分子であると推定された。さらにMG46タンパク質を組換えタンパクとして発現、精製し、培養細胞およびマウス脳抽出液を用いて、相互作用する分子をプロテオーム解析により同定したところ、セマフォリンシグナル伝達に関係するタンパクが複数同定された。現在、MG46がどのようにこれらの分子と相互作用し、アクチン再編成系を制御しているのかを検討している。