表題番号:2014K-6084 日付:2015/04/09
研究課題明治・大正期文学の中産階級読者から見た「女の謎」表象に関する総合的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 教育・総合科学学術院 教育学部 教授 石原 千秋
研究成果概要
 明治期において女性が「問題」となる水準は二通りある。①は、生物学による水準で、「両性問題」となって、女性は「生物学的他者」として定位された。しかし、文学では②の水準が現れていた。それは、「心理的他者」としての女性である。二葉亭四迷『浮雲』においても、主人公の内海文三にとってお勢はまちがいなく「心理的他者」だった。『浮雲』の設定を踏まえたとおぼしき尾崎紅葉『金色夜叉』においても、主人公の間貫一にとって鴫沢宮は理解できない「心理的他者」だった。ここに近代文学としての特質がある。中産階級読者は女性を①の水準でとらえながら、そこに収まりきらない面を②の水準で読むことを文学に期待する地平が構成されていったのである。