表題番号:2014K-6057 日付:2015/04/01
研究課題室町期荘園の構造に関する研究―「公平」の思想と「代官」の経営をめぐって
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 文学学術院 文化構想学部 助手 似鳥 雄一
研究成果概要

本研究で明らかにしたのは請負代官の潜在的なリスクであり、当時は「代官競望」の風潮が存在し、代官としての資質や契約遂行への成算ではなく、目先の利益の追求や「面目」の保持を動機とした代官職の争奪戦という側面があった。彼らの荘園経営は「投機性」ともいえる不安定性を帯びたものであった。また一方の直務については、経営に長けた特定の人材を代官に起用することで、遠隔荘園でも一定の成果が得られた。しかし代官の経営を監査するには豊凶・和市といった情報の把握が必要で、それが遠隔荘園では極めて困難だという構造的な限界があった。そのため直務は基本的には放棄され、あくまで請負を軌道に乗せるために有効なカードとして応急的に用いられるに至るのである。