表題番号:2014K-6037 日付:2015/04/03
研究課題未発生の客体を対象とする譲渡の法的構造に関する基礎研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 大学院法務研究科 准教授 白石 大
研究成果概要
本研究は,未発生の客体を対象とする譲渡がいかにして可能であるかについて,その理論構造を解明することを目的とするものであり,未発生の客体を譲渡しうる法的根拠,客体発生前の段階で譲受人が取得する権利の実体,譲渡対象客体の移転時期,譲渡対象客体の移転過程,客体発生前に対抗要件を具備しうる理論的根拠,という5つの検討課題を設定している。
2014
年度は,2013年度から引き続き,将来の債権を客体とする譲渡についてに関する研究を行い,その成果を「将来債権譲渡の対抗要件の構造に関する試論」として公表した(早稲田法学893135176頁)。この論文は,フランスの「契約の対抗」に関する理論を参照し,対抗要件によって公示されるのは「権利移転」そのものではなく「権利移転を目的とする法律行為(譲渡契約)」であるとの試論を示すものである。これにより,「未発生の債権は移転しえない」という常識的な観念を前提としつつ,それと同時に,債権が未発生の段階でも譲渡の対抗力を備えることができるという帰結を維持することも可能になる。