表題番号:2014B-513 日付:2015/11/07
研究課題高等学校数学における教訓帰納を促す新たな授業法の設計と実践
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 本庄高等学院 教諭 成瀬 政光
研究成果概要
 我々は「本質的な理解を促す指導」を検討した.具体的には(1)本質的な理解を促す指導とは何か,(2)実践のための方法論および評価方法について検討を行う.(1)の研究のために藤村(2012)の「できる学力・わかる学力の両輪モデル」と市川(2008)の「教えて考えさせる」教育モデル,犬塚(2002)の文章理解モデルを参照した.(2)の実践のために教訓帰納を利用することを我々は想定している.教訓帰納とは,市川(1993)が認知カウンセリングの中で用いる1つであり,生徒らが課題遂行中にメタ認知を働かせ,次に課題へ活かすための教訓を導く活動である.その教訓は一般的に通用するものが良いとされている.
  これらのモデルを利用し,我々は高校数学における本質的な理解を促す指導モデルを提唱した.それは(1)定理・公式の活用,(2)定理・公式の意味理解,(3)定理・公式どうしの柔軟な利用,(4)既有知識との統合・つながり,の4因子を定めた.(1)では,先に述べた学習モデル同様,適用学習を前提とし,(2)から(4)は(1)を前提として,さまざまな方向に絡み合っているとしている.
 このモデルでの指導を効果的にするために,協同的学習を取り入れるとともに,教訓帰納の活動を我々は取り入れた.また我々は,生徒らが導いた教訓について「良い教訓」を規程するための評価基準をClark&Linn(2003)のモデルを参考に定めた.
 我々は上記のモデルに基づいて実践を行った.これらの実践を通じて我々は,生徒から出てきた教訓を次の教材として生かすことができることがわかった.さらに今後は,我々のモデルの精緻化を行うことと,我々のモデルを用いて指導することによって生徒らの学習観が変容することについて調査を行いたい.