研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 大学院情報生産システム研究科 | 教授 | 巽 宏平 |
- 研究成果概要
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近年、自動車やエレクトロニクス分野において材料接合のニーズは多様化しており、新たに接合技術が求められている。特に車載用のエレクトロニクス部品は高温耐熱化が求められており、またEVやHEV用のパワーモジュール に期待されているSiCデバイスの実装には、はんだ接合に代わる高耐熱性を有する新たな接合技術の開発が求められている。ここでは300℃以上の長期高温耐熱性を有し、接合温度が400℃程度以下の接合技術をターゲットとした接合方法として、金属ナノ材料の適応可能性の検討を目的とした。現在までに、鉛フリー化に伴った高温はんだ代替の接合材料としてAgナノ粒子、Cuナノ粒子による接合が検討され、ナノペーストなどによる接合性の研究がされているが、高温環境での酸化等の問題も指摘されている。新たな接合材料として、銀よりも融点が高く、耐食性に優れているNiに着目し以下の結果が明らかとなった。
1. 高融点材料で耐食性も期待できるNiを用いた接合が、低温300℃程度で可能であることが分かった。かつ接 合後も300℃以上の高耐熱性を有していることが判明した。
2. パワーデバイスにおけるダイボンディング部「素子裏面電極‐基板電極」あるいは、表面電極とCuリードの接合を 想定したナノNi粒子のAlへの直接接合について、Al蒸着Siチップ同士の接合実験で加熱・加圧を行うことにより十分な初期強度ならびに 高温保管での強度が確保できることが分かった。
3. 実験熱膨張差による応力緩和に金属の中間層を設けた新たな接合構造は効果的である結果となった。今後は応力緩和層の厚みなどの最適化、熱サイクル試験による急激な温度変化による接合信頼性の検証を行う予定ではあるが、熱膨張差による応力問題の解決策として有効であると言える。そしてこの応力緩和層を設けた新たな接合構造は銀ナノ粒子による接合にも効果的であると考えられる。
4. SiCダイオードチップを用いた高温環境でのデバイス動作テストを行った結果、加熱による接合部の劣化はなく、300℃程度の高温動作が可能であることが分かった。