表題番号:2014B-027 日付:2015/04/10
研究課題イノベーション政策と雇用創出に関する理論研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 政治経済学術院 大学院政治学研究科 教授 福島 淑彦
研究成果概要
本研究の目的は、雇用の創出という観点からイノベーション政策を捉え、労働生産性の上昇、賃金水準の上昇、雇用の拡大、失業の減少を同時に達成できるようなイノベーション政策と労働市場政策の組合せを探ることである。具体的には、雇用の創出という観点からイノベーション政策がこれまで行われてきたスウェーデンとフィンランドのイノベーション政策に着目し、両国のイノベーション政策と労働市場政策が雇用創出とどのように結び付いていたかを検証した。本研究が明らかしよう点は以下の2点である。第1に、補助金、交付金、貸付、税法上の優遇措置、クラスター地域の創設などのイノベーション政策の内、スウェーデン、フィンランドにおいて雇用創出という観点から効果的であった政策は何であったのかを検証することである。第2に、イノベーション政策の雇用創出効果をより高める労働市場政策とはいかなるものであったのかを明らかにすることである。第一の点、つまりイノベーション政策の内、最も効果的であると両国の政策担当者や経済学者が指摘していたのが、既存の中規模以上の企業に対しては、ビジネスとして成功した際に支給されるインセンティブ金の支給である。一方、新たに起業や創業を行う個人や小規模企業に対しては、スタートアップのための返済義務のない交付金が最も効果的である。企業規模による政策効果の違いは、中企業・大企業の場合、スタートアップ資金が新しい技術・商品を開発することの制約条件にはなっていないのに対して、個人或いは小規模企業にとってはスタートアップの資金が制約条件となっているためである。第2の点については、新たらしいスキルの習得やスキル・アップを労働者に促す職業訓練や教育が中規模以上の企業に対しては最も有効である。一方、個人ないし小規模企業に対しては、技術や商品開発に関する以外の側面、例えば、税務上の手続きといった企業活動を行う際に必要な手続きに対する手助けが最も有効である。