表題番号:2014A-056 日付:2015/04/10
研究課題在日難民2世の国籍証明─事実上の無国籍者のパイロット調査
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 国際学術院 国際教養学部 准教授 陳 天璽
研究成果概要

 日本に在住するミャンマー、ベトナム、ラオス難民2世・3世の出生登録や旅券の取得状況など身分(国籍)証明の実態について調査を行った。難民2世・3世の本人やその親など計36名、ほかにも市役所、法務省における国籍・戸籍関連の窓口、さらには民間支援団体などを対象にインタビュー調査を実施し、出生登録や国籍・身分証明の取得に関する諸手続きや実態などについて詳しく聞き取り調査を行った。

 難民2世・3世である36名のうち、5名は日本国籍を有し、4名は無国籍と記された身分証明(在留カードや再入国許可書)を所持している。残り27名は、日本政府より外国の国籍を保持している者(たとえば、ミャンマー国籍、ベトナム国籍)と登録されているが、1名以外はいずれの国にも出生登録されておらず、どこの国の旅券も取得していないことが分かった。いわば、無国籍状態となっているといえるだろう。

 日本政府側の職員によれば、「在留カード上の国籍・地域欄に記入している国・地域名は、あくまでも在留管理上の「記号」であり、当事者が旅券を所持していない場合は、推定でいずれかの国・地域を記入することがある」ことが明らかとなった。一方、当事者は通常、身分証明に記入された国籍を自分が保持していると信じ込んでいる。

 身分証明上の国籍と実態のギャップについては、婚姻、帰化など国籍の証明が必要となる局面で、当事者が複雑な説明や立証を求められる場合も多く、当事者たちは海外渡航の際もしばしば障壁に直面していることが明らかとなった。

 研究成果については、無国籍について取り上げたNHKニュース(2014年11月21日放送)などでコメントを行っており、今後、こうした実態についてさらに調査を行い、解決に向けた取り組みが求められる。