表題番号:2014A-003 日付:2016/05/01
研究課題ヨーロッパ統合の下での公共サービスの自由化とフランス経済行政法の変容に関する考察
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 法学学術院 法学部 准教授 大橋 麻也
研究成果概要
 「レギュラシオン」がフランス行政の新たな任務として認識されるようになった背景には、福祉国家の衰退に伴って、それを特徴づけていた経済関与主義または統制経済主義に対立する「国家=調整者」という観念の形成が見られることがわかった。また、行政法上の「レギュラシオン」は、公企業の独占の撤廃と並行して設置された独立行政機関の任務として今日の行政法学の対象とされており、当該任務の実施において、国家はルールの形成とアクターの監視の役割を担うのであるが、その特徴的手段である「勧告」は、公的機関と関係部門の事業者との交渉によりその名宛人との合意をあらかじめ模索した上でなされる点において、ガヴァナンスの論理の行政法への影響を反映するものであると考えられる。
 以上の研究の成果は、論文「フランス行政法における経済調整の任務―国家の経済関与の新たな経路―」の形にまとめてあり、本稿は、今関源成ほか編『ヨーロッパ統合とフランス法の変容(仮題)(中村紘一古稀記念論文集)』(成文堂)に所収の予定である。
 フランス行政法におけるレギュラシオンの法制度に関する研究は、2015年1月に開催されたフランス企業法研究会での判例報告にもつながった。そこでの報告内容は、「電気通信部門の独立行政機関の行政行為に対する裁判的統制 オランジュおよびSFR事件」として国際商事法務(国際商事法研究所)に掲載される予定である。