表題番号:2013B-279 日付:2014/04/11
研究課題生体システム動態科学を融合した材料デバイス医理工学の新展開
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 逢坂 哲彌
研究成果概要
各種疾患(がん、感染症、精神・神経疾患等)の診断・治療技術開発の基盤となる体系化された学理の医理工分野の融合による構築に貢献すべく、生体の恒常性を維持するための有機的に統合された体系(生体システム)の動態に着目し、その疾患に関連する変調や異常を電気的・磁気的に検出あるいは制御する材料・デバイスの開発を目標とする研究に取り組んだ。具体的には、動作原理に界面近傍における電場の変調や物質の磁場への応答が深く関係する「電界効果トランジスタ(FET)バイオセンサ」と「磁性酸化鉄ナノ粒子(MNPs)」を対象とした。
FETバイオセンサは、半導体素子であるトランジスタのゲートを認識・検出場とし、その絶縁膜表面に吸着した検出対象物質の電荷を検出するデバイスであり、ゲート絶縁膜表面の分子修飾(例えば抗体や糖鎖の固定化)によって、デバイスの基本設計を変更することなく多様な生体関連物質(特にバイオマーカー)の識別・検出が可能となる。本研究では、特に肺がんの腫瘍マーカーを対象とし、組織型の異なる肺がん(小細胞がんと非小細胞がん)それぞれのマーカー検出のための抗体固定化FETの作製と評価を行った。いずれにおいても、腫瘍マーカーを認識する抗体をアミノプロピルシラン単分子膜で修飾したSiO2ゲート絶縁膜に架橋剤グルタルアルデヒドを介して固定化し、その固定化方法や固定化密度がFET応答に及ぼす影響を検証した。その結果、いずれの肺がんマーカーに対しても、測定溶液中でマーカーが有する負電荷に起因する応答が検出され、また、抗体固定化量が多いほど応答量も大きくなる傾向が確認された。抗体固定化FETバイオセンサが界面最適化により肺がんマーカー検出に有用なツールとなることが示唆された。
MNPsは、その生体適合性や磁気特性から磁気ハイパーサーミア(がん温熱療法)をはじめとする医療分野での利用が期待されている。本研究では、将来的な中皮腫治療への応用を視野に、組織型の異なる3種の中皮腫細胞にMNPsが及ぼす影響をin vitroで評価した。その結果、組織型によりMNPs添加に伴う細胞死滅率が異なることが見いだされ、また、交流磁場下でのMNPs発熱により死滅率が上昇することが確認された。