表題番号:2013B-268 日付:2014/05/17
研究課題イタリア産地構造研究における産地地図の作成
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 本木 弘悌
研究成果概要
 本研究はイタリアの地場産業地域における産地構造の実証研究のために、統計のデータの整備とその地図化を目的とする。申請者はこれまでに地場産業地域の産地構造研究を重ね、産業の発生と存続に関する地域的特性に着目してきた。製造業がグローバル化するなか、日本においては産業の空洞化など、製造業現場の海外移転が続き、地域経済を支えてきた地場産業の行方が注目されている。特に伝統的工芸品産地や高度成長期に発展した地場産業産地は、職人や工業従業者の高齢化や後継者問題を抱え、存続の危機に瀕している産地も少なくない。一方、海外では日本と同じような現象がヨーロッパの工業国イタリアで生起している。地域の独自性が強いイタリアでは、全国的に伝統的工芸品産地や地場産業産地が分布し、地域経済を支えてきた。しかし、1990年代以降、ヨーロッパ経済の東西融合により、イタリア製造業は東ヨーロッパ諸国への進出が盛んとなり、日本と同じく産業の空洞化現象が問題視されている。
 申請者は2000年よりイタリアと日本の地場産業産地の比較研究を進め、現地調査を重ね一定の成果を収めてきた。これまでの研究対象地域は、Lombardia州 Lumezzaneの金属製品産地、Comoの絹織物産地、Emilia-Romagna州Carpiのニット産地、Sassuoloのタイル産地、Toscana州Pratoの繊維産地、Piemonte州Biellaの毛織物産地、Furiuli-Venezia州Pordenoneの家具産地等であり、研究成果の一部は学会等において発表してきた。今後はイタリアの繊維産地と家具産地の実態研究をさらに進め、グローバル経済下における、日本とイタリアの地場産業産地の比較研究を計画している。イタリアの地場産業地域の実証研究を行うにあたり、地域的な統計データを活用してきたが、イタリアの工業統計は地域区分が細分化されており、地域的な動向が読みとりやすい。イタリアでは産業に対して行政単位での支援は一般的でないため、産地は行政単位の地名を冠していても行政単位の地名と空間範囲は一致していない。申請者は実態調査により、地場産業の空間的範囲は行政単位のよりも広範囲に構成されていることがわかっている。このことによりイタリアの地場産業産地の特定は曖昧のものとなり、実態把握が正確なものとはなっていない。そこで本研究ではイタリアの地場産業産地に関わる工業地域データを、産地単位で整備し、今後の研究基盤を築くこととした。本年度は主にFuriuli-Venezia州の産地に関する統計データを整備し、その一部を地図化した。