表題番号:2013B-265 日付:2014/03/17
研究課題親水性高分子を利用した新しい環境測定用教材の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 竹田 淳一郎
研究成果概要
高分子化学は繊維やプラスチック、炭水化物やたんぱく質など高校化学の重要な履修内容であり、教科書でも多くのページが説明に割かれている。しかしながら、モノマーから合成できる高校生向けの高分子材料の教材はナイロンやスチレンの合成などごく少数に限られており、大変少ないのが現状である。
 また、中学や高校で使用するフェノールフタレインなどの水素イオン濃度感応性の色素は、反応系中に投入して使用したり、pH試験紙として紙に固定化して使用したりするものがほとんどで、使用後は反応系の溶液とともに廃棄せざるを得ず、環境に負荷を与えている。
そこで、本研究では繰り返し使用できる環境測定用の親水性高分子膜を作成し、中学高校生向けの教材化を試みた。
具体的には、親水性ソフトコンタクトレンズの材料を参考にして、親水性高分子膜の合成を行ったのち、色素を包含させて周りの環境変化により色が変わる環境指示薬として使用できるかどうかも併せて検討した。まず、一般的なソフトコンタクトレンズの材料として使用されている材料のN-ビニルピロリドン、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ジメチルアクリルアミドを用い、アゾビスイソブチロニトリルを重合開始剤、ジメチルスルホキシド、水を溶媒として使用し、これらの割合と重合条件を変えて何回も重合を繰り返し、最適なものを探索した。この過程で、ポリエチレングリコールジメタクリレートは膜の硬さに重要な影響を与え、特に量が少なすぎる場合には膜の硬さが損なわれてしまうことが分かった。また、ヒドロキシエチルメタクリレートは割合を減らすと膜が不透明になってしまい、視認性に問題が出てしまうこともわかった。これらの結果を総合し、重合開始剤を投入後10分程度で透明な親水性高分子膜を重合できる方法を開発できた。
さらに教材化にあたり、親水性高分子膜に包含する環境応答性の色素(具体的にはフェノールフタレインやアントシアニンをはじめとする水素イオン応答性のもの、鉄や銅などの金属イオンに対して応答を示すもの)の種類を検討した。この研究では、フェノールフタレインを包含させた高分子膜を作成したが、測定の際にわずかに高分子膜からフェノールフタレインが流れ出してしまう現象が確認できたので、今後はこの点の改良を進める必要がある。