表題番号:2013B-263 日付:2014/03/20
研究課題国語教育におけるVISUAL LITERACY教育の可能性に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 佐々木 基成
研究成果概要
いわゆる、PISA(OECD生徒の学習到達度調査Programme for International Student Assessment)・ショック後に、読解リテラシーの向上が国語科の目標として掲げられることが多くなった。情報技術の発展とともに映像によるコミュニケーションは増加する一途である。国語教育がそれを有機的にとりいれ、教室が現実とリンクして生徒の世界認識をより正確に豊かにするために寄与できうるかどうかを本研究の目的とした。読解はそもそも、ある特定の一義的な解答を取り出すことのみの謂ではなく、対象に内在するパーツに有機的な関連を見出すという意味創出の営為でもある。グラフも論じる立場によって読み取られる情報に差異があるように、平面的に羅列された対象間に有機的な因果関係を見出し、それを系統化して了解したうえで表出する営為全体に言語は関わるのであり、国語科は読解対象を「連続型テキスト」に限定すべきではない。その意味で、写真や映画、イラストといった図像に対する解釈と、言語による表出は、国語教育の一つの読解力育成のオプションとなりえよう。本研究では、平面的に情報が並置する「非連続型テキスト」を、その読解自体を主目的として国語科に導入する可能性を模索した。高度情報化社会においてわれわれは映像情報に囲繞されて生活している。PISAの「非連続型テキスト」導入に即して、平面的に羅列された対象間に有機的な因果関係を見出し、それを系統化して了解したうえで言語として表出する能力の涵養の可能性を映像資料を用いた研究授業から試行した。具体的には次のような研究授業実践を実施した。①「写真を読む」 被写界深度や構成などの写真の技法を提示した後、セバスチャン・サルガドの写真を読解した。②「ピクトグラムを読む」近年増えているピクトグラムを構成する意味内容を言語化した。③「絵画の意味」石田徹也のイラストを、その人生や時代背景といった文字情報との連携による読解の変化を検討した。以上の実践から、映像を言語化する技能と、それ単体のオブジェクト布置から内部構成を再構成する能力、映像とそのコンテクストのあいだに有機的な関係を創造する能力は、個別的かつ相補的であるという帰結を得た。今後は、『WRITING THE VISUALCAROL』(DAVID&ANNE R. RICHARDS)など海外の事例や論考を踏まえて、実践を積み重ね、系統的な学習の構想を構築していきたい。研究成果のさらなる公開を検討中である。