表題番号:2013B-262 日付:2014/04/16
研究課題パラグアイ共和国イグアス移住地における日本人農業社会の地域との関わり
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 高等学院 教諭 佐々木 智章
研究成果概要
申請者は、2000年代前半にパラグアイ東部のイグアス移住地における現地調査から、日本人移民による大規模な大豆の不耕起栽培がパラグアイの大豆増産に貢献したこと、このために他の地域への転住者から取得した土地が大きな役割を果たしたことを明らかにした。しかし、その後のおよそ10年間で世界的な環境保全に対する意識はますます高まり、パラグアイ人による日本人所有の土地の不法占拠問題もあり、日本人移民を取り巻く状況は変化している。こうした中で、移住地の日本人農業社会がホスト社会とどのような関係を保ち存続しているのかを明らかにするのが本研究の目的である。
現地調査では、以前の調査で得られた資料をもとにし、日本人農家への聞き取りを行なった。不耕起栽培による大豆栽培中心の経営は継続されていたが、環境保全を目的に森林伐採が厳しく規制されており、土地の拡大が難しくなっているのが現状であった。しかし、植林を進めている農家や、大豆の他に肉牛の肥育を行なう農家も増加していた。日本人会やその一機関である地域振興協会では、ホスト社会との関係を中心に聞き取りを行なった。それによると、農家レベルでの取り組みと同様に、植林活動が活発になっていた。この活動では、日系企業との連携で整備された育苗場で育てられた苗を使用し、一部は移住地内に居住するパラグアイ人にも提供し、森林育成や木炭をつくるための指導も行なわれている。環境保護や単純な収入だけではなく、長期的な視野で収入を得る意識も育てたいということも活動のねらいである。このようにして、経済格差が大きいことによるホスト社会との摩擦回避の努力が行なわれていた。
農家・日本人組織に共通していえることは、植林活動が活発になってきたことである。こうした活動には、環境保全への対策、ホスト社会との摩擦回避など多様な意味が含まれているが、イグアス移住地の日本人農業社会を取り巻く外圧によって生まれてきたものに他ならない。今回の調査で行うことのできなかった、植林面積の変化については今後の課題とし、中等教育段階の地理における地域学習への活用の可能性を探っていく予定である。
なお、本研究の成果は、地理教育関係の学会や中等教育段階の地理に携わっている教員の研究会で発表する予定である。