表題番号:2013B-231 日付:2014/04/04
研究課題犬の散歩により飼い主の身体活動を促進させる効果的な支援方法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 岡 浩一朗
(連携研究者) スポーツ科学学術院 助教 石井 香織
研究成果概要
 これまでペットを飼うことが人間の健康にもたらす恩恵について盛んに研究が行われ、成果が蓄積されつつある。特に、犬の飼育や犬の散歩に関しては、子供の過体重・肥満者の割合の低さ、高齢者における歩行速度の維持、心疾患患者の良好な予後など、健康の維持・増進にとって好影響を及ぼすことが明らかにされている。そのため、最近は人間の健康や体力を維持・向上させるための効果的な戦略として、犬の飼育や犬の散歩に注目が集まっている。犬の飼い主の身体活動を促進させるための第一歩として、犬の散歩を含む飼い主の身体活動がどの程度行われているのかといった実態を把握することが重要であると考えられるが、先行研究では身体活動の評価が調査票等による主観的なものに依存しており、バイアスを多く含んでいる。本研究ではこれらの問題点を解消するため、わが国における犬の飼い主の身体活動状況について加速度計を用いて客観的に評価し、その実態を明らかにすることを目的とした。
 犬の散歩の実態調査に参加した犬の飼育者48名(52.2±10.4歳)を分析対象とした。7日間の犬の散歩日誌およびスズケン社製ライフコーダによる犬の散歩行動の測定、質問紙による犬の飼育者の属性(性別、年齢、婚姻状況、教育歴、住居形態、同居の有無)および飼い犬の特性(サイズ、犬種、年齢、頭数)の調査を行った。日誌をもとに、犬の散歩時間に該当するライフコーダデータを抽出した。1日および週あたりの犬の散歩回数、散歩時間、中等度強度以上の散歩時間、散歩中の静止時間、散歩強度、週あたりの散歩時間における中等度強度以上の散歩時間および制止時間の割合、週あたり中強度以上の散歩時間が150分以上の飼育者(推奨身体活動充足者)の割合を算出し、犬の特性の影響について検討した。
 毎日犬の散歩を実施している者が47.9%と最も多く、6日(18.8%)、4日(12.5%)の順であった。91.9%が1日1回または2回散歩を実施していた。また、平均で1日1.6±0.5回で計63.4±35.0分、週5.7±1.7日で計363.6±230.9分の散歩を実施していた。週あたりの散歩時間のうち、43.2%は中等度強度以上で散歩を実施していたが、10.3%は立ち止っている時間であった。犬の散歩の平均強度は3.2±0.8であり、41.7%が推奨身体活動充足者であった。中・大型犬は小型犬と比較して有意に1日の散歩回数が多く、中等度強度以上での散歩時間が長かった。また、愛玩犬(1.39±0.4回)は他の犬種(1.69±0.4回)と比較して、1日の散歩回数が有意に少なかった(p=.019)。
 犬の飼育者はおおよそ毎日1時間、そのうち45%程度を疾病予防や健康増進に有益である強度で犬と散歩していた。また、犬のサイズは中等度強度での散歩回数や散歩時間に影響を及ぼすことが明らかになった。これらの知見を犬の飼い主の身体活動を促進させる効果的な支援方法の開発につなげていく必要がある。