表題番号:2013B-230 日付:2014/03/11
研究課題睡眠改善のための運動療法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 内田 直
研究成果概要
本年度は、フィールド研究として行ってきた長期運動が睡眠に及ぼす効果についてのデータを詳細に分析し、以下の結果を得た。これは、スペイン・バルセロナで行われたヨーロッパスポーツ科学会において発表された。


運動をした日の夜間睡眠中の心拍数は、運動をしなかった日の心拍数よりも低い。

我如古雅史(大学院生)筆頭発表者

近年、運動が睡眠中の様々な生理学的指標(脳波、心拍数、深部体温など)に及ぼす影響について調べられている。これまでのいくつかの研究は、運動したあとの夜間睡眠中の心拍数が上がっていることを示している。しかし、これらの研究は実験的に一回の運動をさせたあとの夜間睡眠中の心拍を調べたものである。この研究で、我々は一年間の運動習慣を与えた場合の心拍数の変化について調べた。

方法: 23名のオフィス労働者で、それまで習慣的な運動を持っていない人を対象とした。週に4日間、65~73%HRmax(220-年齢の心拍数)を目標として、20分間の自転車エルゴメーターをこぐことを目標とした。運動については、毎日記録をつけてもらった。睡眠中の心拍数は、マットレスの下に挿入するシート型のセンサーを用いた。これは、体の発する体動のほか、心拍や呼吸などの振動を検知し、この振動データにフィルタ処理をして心拍数を抽出するもので、すでに心電図との高い相関を示したデータが出版されている。
結果: 年間をとおした運動の回数は週に3.4回であった。一年間を通して、平均の運動会数に有意な変化は見られなかった。平均心拍数は、6ヶ月目では1ヶ月目と9ヶ月目に比べて有意に低かった。運動をした日の夜の心拍数は、運動をしていない日の心拍数よりも有意に低かった。
考察: 本研究では、週に3-4回の運動を続けても、睡眠中の心拍数に対する有意な変化は見られなかった。しかし、運動をした日の睡眠中の心拍数は、運動をしていない日よりも低かった。これは、今回行ったような中強度の運動習慣は、睡眠中に副交感神経優位な状態をつくり、これによって心拍数が減少している可能性を示唆している。睡眠改善のための運動は、高強度のものでなく、中強度のものを継続するのが良い可能性がある。

The Heart rate during sleep is lower in the day with exercise than without exercise
Ganeko, M. 1, Kazama, S. 2, Ito, S. 2, Inagaki, Y. 2, Uchida, S. 3
1: Graduate School of Sport Sciences, Waseda University (Saitama, Japan), 2: Aisin Seiki Co., LTD. (Aichi, Japan), 3: Faculty of Sport Sciences, Waseda University (Saitama, Japan)