表題番号:2013B-229 日付:2014/04/04
研究課題短距離走モデルを球技種目にコーチングする縦断的研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 礒 繁雄
研究成果概要
○目的
 本研究は、短距離走モデルをバスケットボール種目の練習内容の一部として導入した。先行研究成果では、3週間各3回の陸上競技場にて導入したトレーニングが最大速度向上につながっていた。さらにその速度向上の要因は脚の回転数の増加によるものであった。今回は、このトレーニングを体育館内にてほぼ同様な内容で提供した場合のトレーニング効果とそのコーチング方法を注目している。さらに、屋外でのサッカー競技のランニング内容の調査と現状も明らかにした。

○方法
1.男子大学生バスケットボールチームのトレーニング内容に短距離走モデルに基づいた要素を4か月間導入した。トレーニング内容は、SSC強化のためのジャンプ系と体幹補強を週3回、各60分程度行った。この内容は、先行研究に基づいた方法を用いている。
 トレーニング効果は、40m走の所要時間とコメント調査を開始時と4か月後に実施した。
2.サッカー競技のランニング導入状況は、口頭調査により行った。今回は、中国スパーリーグと韓国代表フィジカルコーチを対象とした。調査結果は、質的調査分析方法を用いた。

○結果
1.バスケットボールチーム
・走能力の向上は、40m記録から算出したが向上は見られなかった。
・選手のコメントは、短距離走の理論と動作への応用方法が理解できている。短距離走への効果は出ているまたはそうでない!の意見が2分化した。効果が出ていると答えた選手が、記録向上につながったとは限らなかった。

2.サッカー競技
 今回対象としたフィジカルコーチは、同様の者が2か所(中国・韓国)を指導していた。まず中国の状況は、施設及び時間は用意されているが選手の短距離走に対する価値観が低く積極的な参加がみられないとの報告である。一方、韓国代表は、積極的な参加であったが、個々が試行錯誤する視点が薄く指導任せの現状との報告であった。

○考察及び今後の課題
 バスケットボール選手への短距離走トレーニング導入には、体育館内の狭い(40m程度)距離のトレーニングでは効果が出ないように考えられる。さらに、出来栄えと個人理解の連動が少ないことは、バスケットトレーニング場所以外での新たな志向ができやすい環境を提供することが重要であると思われる。
 サッカー競技者が短距離走を行う上で国の意識の違いが存在することがわかった。この点はさらに調査を進めることが必要である。