表題番号:2013B-228 日付:2014/04/02
研究課題アスリートの皮膚バリア機能評価に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) スポーツ科学学術院 教授 赤間 高雄
研究成果概要
本年度は、実際のスポーツ現場でアスリートの皮膚バリア機能評価を実施する前段階として、皮膚バリア機能が皮膚表面の黄色ブドウ球菌の増殖に与える影響を検討することとした。皮膚モデルとしてヒト3次元培養表皮LabCyte EPI-MODEL (Japan Tissue Engineering)を使用し、分泌型免疫グロブリンA (secretory immunoglobulin A; SIgA)、ディフェンシン(human β-defensin 2; HBD-2)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(coagulase-negative staphylococcus; CNS)および角質層の厚さによる黄色ブドウ球菌数や生細胞数の変動を検討する予定であった。しかしながら、ヒト3次元培養表皮を用いて細菌感染状態を検討した研究はなく、予備実験を実施し、プロトコールを確立する必要があった。実際にヒト3次元培養表皮を培養したのち、RNAやATPを測定し、生細胞数を計測した。また、培養された角質層の物理的バリア機能を評価するために皮膚透過性試験を行い、角質層のタイトジャンクションを確認した。これらの予備実験の結果から、皮膚バリア機能と黄色ブドウ球菌の増殖を検討するための具体的な研究プロトコールを確立した。
また、身体活動量が皮膚バリア機能に及ぼす影響も検討した。健康な高齢者を対象とし、日常生活における身体活動量の違いが皮膚の物理的バリア機能に及ぼす影響を検討した。測定項目は、角質水分量、経皮水分蒸散量(trans-epidermal water loss; TEWL)、身体活動量とした。その結果、年齢と運動量(r=-0.406, p<0.01)、歩数(r=-0.465, p<0.01)が負の相関関係を示すことが確認され、目尻の角質水分量とTEWLに有意な負の相関関係がみられた(r=-0.326, p<0.01)。また、前期高齢者の目尻においては、歩数と角質水分量が負の相関関係を示し(r=-0.476, p<0.01)、歩数とTEWLが正の相関関係を示すことが明らかになった(r=0.365, p<0.05)。従って、前期高齢者において過度な身体活動が皮膚の物理的バリア機能を低下させる可能性が考えられるが、前腕における角質水分量およびTEWLには歩数との有意な相関関係が認められなかった。故に、ウォーキングをする際の紫外線の暴露が皮膚の物理的バリア機能を低下させると推察されるが、本研究では紫外線の暴露について検討していないため、今後さらに詳細に検討していく必要がある。