表題番号:2013B-218 日付:2014/04/11
研究課題視覚誘発電位の非線形システム解析による運動視の神経機構の解明とその臨床応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 准教授 百瀬 桂子
研究成果概要
視対象の動きの知覚(検出)を行う運動視に関わる脳機能を,簡易計測可能な視覚誘発電位(VEP)を利用して明らかにすることを目的とした.本検討では,運動視のメカニズムに関する研究の整理と,それらを踏まえての刺激系列とVEP分析方法の見直しを行った.加えて,VEPを精度よく記録するためにアーチファクトの影響の確認を行い,測定環境整備を行った.当初の研究計画では,VEPに対して非線形システム解析を適用することとしたが,文献調査と予備実験を踏まえて,刺激系列と分析方法を変更した.非線形システム解析に適した刺激系列では運動残効などの影響が大きく,適切な分析が行えないことが明らかとなったためである.加えて,そこで,視対象の動きの方向の変化の検出に目的を絞り,2つのパッチの点滅による仮現運動(Phi)を刺激に採用することとした.このパッチの点滅周波数を固定することによって,Steady-state型視覚誘発電位(SSVEP)を測定することとした.加えて,一方のパッチのコントラストを反転させた運動方向錯視(reverse Phi運動)刺激についても測定を行うことで,運動方向とSSVEPの関係を検討した.刺激の運動方向は,運動エネルギーモデル(Adelson & Bergen, 1985)を用いて予測した.健常成人9名を対象として,128チャンネルの高密度脳波の計測を行,予測された運動方向とSSVEPの位相に相関が見られた.具体的には,通常の刺激(Phi)とコントラスト反転を伴う刺激(reverse Phi)に対するSSVEPの位相が反転(逆位相)となり,子の位相反転は後頭部から側頭部の領域に見られた.しかしながら,点滅に伴う輝度変化の影響もVEPには反映されているため運動視の検出においては課題が残された.今後は,コントラストの影響を排除できる正弦波縞刺激を用いて,比較的明瞭な運動方向知覚が現れる運動残効時のSSVEPの測定・分析を行う予定である.