表題番号:2013B-216 日付:2014/04/10
研究課題思春期・青年期の児童生徒の心理的柔軟性と適応の関連
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 准教授 大月 友
研究成果概要
<研究1:中学生を対象とした心理的柔軟性測定尺度日本語版の作成>
思春期・青年期の若者向けに海外で作成された心理的柔軟性の測定ツールである,Avoidance and Fusion Questionnaire for Youth(AFQ-Y)の日本語版を作成した。中学生1189名に対して,①AFQ-Y日本語版,②児童用抑うつ性尺度,③ストレッサー尺度,④児童版不安尺度,⑤思考抑制尺度,を実施して信頼性と妥当性を検証した。因子分析の結果,AFQ-Yは原版と同様に1因子構造を示し,高い内的整合性が確認された(α=.86)。また,再検査法において高い信頼性が示された(r=.72)。妥当性の検証のため相関分析を実施した結果,仮説通り,不安(r=.55),抑うつ(r=.53),思考抑制(r=.50)と有意な高い相関を示した。また,抑うつに対する予測的妥当性を検証するため,デモグラフィックデータ(年齢・性別),ストレッサー尺度,AFQ-Yを用いた階層的重回帰分析を実施した。その結果,AFQ-Yを投入した場合でも有意な説明率の上昇が確認された。これらの結果から,作成されたAFQ-Yは高い信頼性と妥当性を有した尺度であることが示された。

<研究2:小学生を対象とした心理的柔軟性測定ツールの開発>
心理的柔軟性には,文脈に応じて自身の認知(関係反応)を柔軟に変化させる能力が必要とされる。そこで,小学生に対して文脈に応じた認知能力の個人差を測定するための課題を作成し,その予備データの収集を実施した。課題は先行研究を参考に,複数の刺激を時間的な関係(前後)で関係づける課題,比較関係(大小)で関係づける課題を作成した。課題の作成と実施は,パーソナルコンピュータ上で行った。各課題とも,4つの刺激を用い(A・B・C・Dとする),訓練において隣合う刺激同士の4つの関係を形成し(すなわち,AB関係,BA関係,BC関係,CB関係,CD関係,DC関係),隣り合わない刺激同士の関係(複合的内包)をテストした(すなわち,AC関係,AD関係,BD関係, CA関係,DA関係,DB関係)。また,各課題とも刺激機能が確立された刺激関係にもとづいて獲得されているか(刺激機能の変換)がテストされた。33名の小学生に課題を実施し,テストの達成状況を検討した。その結果,前後関係の課題では複合的内包関係テストの達成率が63%,刺激機能の変換テストの達成率が54%であった。大小関係の課題では,複合的内包関係テストの達成率が67%,刺激機能の変換テストの達成率が67%であった。これらの結果から,今回作成した課題は,小学生の認知の柔軟性の個人差を測定する上で,妥当な課題であることが示された。