表題番号:2013B-205 日付:2014/04/12
研究課題睡眠時無呼吸症候群サポートロボットの開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 人間科学学術院 教授 可部 明克
研究成果概要
<概要>
 現在,日本では人口の1~2%(約200 万人)が睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome : 以下SASと表記)の患者であると推定されている。これは夜中などに影響を受ける家族も含めれば、1000万人近くが何らかの形で関わっていることになる。
 SAS には、呼吸気道閉塞による閉塞性SAS(Obstructive SAS : OSAS)、脳の睡眠中枢に問題のある中枢性SAS(Central SAS : CSAS)、閉塞性と中枢性の混合型SAS(Mix SAS : MSAS)の3 種類があり、90%以上のSAS 患者はOSAS と考えられている。このOSAS 患者に対応したサポートを行うためロボットの開発を進めている。
 試作開発を経て国際ロボット展などに出展するなど評価を進めており、多くの個人ユーザを中心にメディアを含めて反響をいただき、国内外での市場性が確認された。
‘13年度には、医療機関と連携して実際のデータに基づいて無呼吸状態の検出アルゴリズムの改善を行っている。

<従来の対策および本研究成果による対策>
 睡眠時無呼吸症候群は、日中の強い眠気による自動車・鉄道等各種の事故などの重大な業務上ミスを引き起こすリスクがあり、社会問題となっている。また海外でも同様の症状の人がおり問題となっている。さらに太っているなどの体格によらず、アジア人は顎の形から睡眠時無呼吸症候群になりやすいとの指摘もある。
 こうしたことから、医療機関を中心に睡眠中の無呼吸状態を改善する様々な用具が考案されている。特にマスクを使い陽圧をかけて空気を送り込む装置:CPAPが実用化されているが、装着が煩わしい、出張時に運ぶ必要ありなどの課題がある。
 一方、「大きい抱き枕」を抱きながら、横向きに寝ると無呼吸症状が改善されるとのケアする家族の経験があり、それを活かして「抱き枕型のサポートロボット」を開発している。抱き枕にアームを配置し、無呼吸状態になった際にアームで頭部を横から刺激して、「仰向け」から「横向き」に頭の向きを変え、気道を確保するようにロボットを試作している。
 個人の潜在ユーザから要望を多数頂いており、医療機関と連携して無呼吸状態の検出アルゴリズム強化を進めている。さらに、病院での臨床評価およびそれに対応した機能向上を進めて、製品化に着手できるレベルまで完成度を高めることを目指す。


<研究成果>
 血中酸素濃度(SPO2)を測るパルスオキシメータ及びいびき音収集マイクを用いて、ユーザの生体情報を計測して「低呼吸・無呼吸状態」を判定し、枕型ロボットのアームでユーザの頭部を横から刺激して、睡眠姿勢を仰向けから横向きに矯正することによって、気道を確保し呼吸の改善を図っている。アームによる睡眠姿勢矯正機能により、OSASによる身体への悪影響と各種合併症を軽減するよう、多くのユーザに対応できる「低呼吸・無呼吸状態検出アルゴリズム」の改良開発を行った。無呼吸状態検出アルゴリズムは、既に医療機関で実際の患者さんのポリソノグラフィーで計測したデータによりオフラインで動作させ、検出アルゴリズムが幅広いユーザで動作するように確認した。

 「医療機関との連携によるソフトウェア開発」
  1)成人の睡眠時無呼吸症候群のユーザ(OSAS:閉塞性)
    東京女子医科大学睡眠総合センター殿のご協力により、実際の睡眠時無呼吸症候群の方のデータ
   (睡眠ポリソムノグラフィ検査などで測定したもの)を、個人を特定できない様式で参考とさせていただき、
    そのデータに従ってロボットがオフラインで動作するように、検出・判定のソフトウェア開発を行った。

  2)若年層の睡眠時無呼吸症候群のユーザ(CSAS:中枢性)
    来年度以降の課題として取り組む。