表題番号:2013B-198 日付:2014/03/31
研究課題レーザープラズマ制動放射光を光源とする多目的分光分析装置の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 助教 池沢 聡
研究成果概要
本研究ではQスイッチパルスで出力されたレーザー光を集光させることで得られる、レーザープラズマをマイクロレベルの点光源として活用することを狙いとしている。そこで、2013年度はこの点光源を任意の空間上に生成するために必要な、ガルバノミラースキャナシステムを開発した。このレーザースキャニングシステムは単に任意の空間上にプラズマを生成するだけでなく、プラズマ生成時に数十マイクロ秒の間に得られる制動放射光を、レーザー出力と同じ光路を逆にたどり、主に分光に使用する波長帯だけを反射するミラー(コールドミラー)により分光器へ導く光学系となっていることが、独自技術の最大の特徴となっている。従って、一度に多点を同時に分光分析するための活用が可能である。開発には予算額内で実現するために、ほとんど一からの手作りとなり、組み立てが完成し、初期試験が可能となったのは2013年12月である。その後、各光学材料に対する分光計測の実測データを取得し、光学材料の追加購入を行い、ミラー駆動用モーター制御の工夫や、高出力レーザーに耐性を持つミラーの取り付け方の検討、ミラーの切断、レンズ位置の検討、制度確保のための光学系配置の試行錯誤などを行い、2014年3月にスキャニングシステムが完成した。動作試験では、スキャン動作速度を確認し、10k points per sec、20k points per sec、30k points per secのいずれも描画可能であることを確認した。また、本研究では、システム完成後の活用法の一例として、土壌成分の多点計測を念頭に置き、「海砂中におけるセシウム及びバリウム(セシウム137の壊変原子)のレーザー誘起ブレークダウン分光(LIBS)分析をシステム開発と平行して分光スペクトルを取得した。これは、LIBSシステムが非接触でリアルタイムに遠隔計測できる装置であることから、特に危険区域における過酷環境下での実地計測を想定したことによる。LIBSシステムにレーザースキャニングシステムを組み合わせることにより、任意空間上の多点における汚染物質のモニタリングが可能となる。本研究の成果物として、2013年12月に開催された国際学会(International Conference on Sensing Technology)におけるプロシーディングスに掲載され(課題番号記入済)、また2014年度中に出版される学術書(Springer)においてブックチャプターとして参加(課題番号記入済)している。今後はこのシステムをベースとし、さらに改良を進め、小型分光器の組み込みなど、様々なシステムの多目的発展を目指したい。