表題番号:2013B-196 日付:2014/04/11
研究課題10KW超小型バイナリー発電システムの無人化運転制御に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 李 よしかつ
研究成果概要
 近年、化石燃料枯渇問題や環境問題などから、再生可能エネルギーとして未利用熱エネルギーの有効活用が益々注目されている.未利用熱エネルギー源としては、工場廃熱や温泉熱、海洋表層深層温度差熱などがある.これらの未利用熱エネルギーを用いた発電は、 火力発電や原子力発電と比べて、その熱源と冷却源の温度差が非常に低いため熱効率が低く、発電量あたりのコストが高くなる. 現在までのところ、熱エネルギーを用いた発電としては、100万KW級の大規模地熱発電から50 KW級までの小型発電は実用化されているが、小規模工場や温泉旅館でも設置可能な10 KW級の超小型バイナリー発電プラントの実用化には至っていない.それは、豊富な低温度差熱エネルギーであっても、風力発電や太陽光発電などの他の再生可能エネルギーと比べ、安価に、また安定に発電が維持できる熱交換器、タービン、ポンプなどにより構成された熱サイクルユニットの開発や作動媒体の選定、制御システムが十分に開発されていないためである.
 一方、このようなバイナリー発電プラントは多入力多出力多変数システムであり、また非線形特性、無駄時間特などを有する動特性が複雑な制御対象である.これまでこのような発電プラントに対し、非線形モデルとBPを用いた制御手法が提案しているが、発電プラント全体の動特性を表す線形化モデルと制御方法は、未だ開発されていない.
 そこで本研究では バイナリー発電プラントの動作点近傍における動特性を十分に捉えた線形化伝達関数行列モデルを導出し、顕著な操作量と制御量間の相互干渉を考慮し制御性能を高める非干渉化PID制御系を設計する. 更に、制御量の数よりも操作量の数が多い制御系の制御性能について検討した.その結果、バイナリー発電プラントの適切な温水、及び冷水供給ポンプ回転数の動作点近傍における動特性を十分に捉えた線形化伝達関数行列モデルを導出し、実データとの比較により、その妥当性を示した.また、顕著な操作量と制御量間の相互干渉を考慮した非干渉化PID制御系を設計し、非干渉化前置補償器による制御性能を示した.更には、限られたコストの中で設置可能な操作量を増やすことによる制御性能の効果について検討し、その有効性を示した.