表題番号:2013B-194 日付:2014/04/08
研究課題アダプティブ・多種探索PSOアルゴリズムをベースとした超高速リアルタイム制御方式
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 馬場 孝明
研究成果概要
粒子群最適化(PSO)アルゴリズムは最適化問題を解決する手法の一つであり、様々なシステムに幅広く応用されている。しかし、従来のPSO応用システムでは、一種類のPSOアルゴリズムの適用を前提とするため、動的非線形システム等の複雑な探索が極めて困難となる。そこで本提案では、複数のPSOアルゴリズムを用いそれぞれの利点を活かすことで、どのような状況でも最適な探索を達成できる「アダプティブ・多種探索PSO」の研究を目指す。具体的には、まず、多種類のPSOアルゴリズムを一元化し、選択係数という概念を導入することで、異なる応用分野に対しても最適なPSOアルゴリズムが選定できるハードウェアを開発した(研究業績[1])。次に、一元化したPSOをベースとし、粒子群の収束状況に応じて選択係数を変化させることで、多種類のPSOアルゴリズムを同時に動作させ、並びを適切に切替えるアダプティブ・多種探索PSOを実現した(研究業績[2])。これは、実社会において異なる役割を持つ集団(例、技術者、教員、警察など)が、それぞれの適した場で時には他集団と協力しながら任務を遂行するような社会構成を模式したアルゴリズムに相当し、異なる働きを持つ複種のPSOを粒子群の収束状況に応じて、適宜、切替えるものである。適切なPSOの選択および多様な収束過程の実現により、どのような状況でも最適な探索を達成でき、探索性能を従来手法と比較して約3倍に向上できた。
アダプティブ・多種探索PSOの性能検証には、Microsoft社のVisual Studioを用いて作成したシミュレーションモデルを用いた。代表的な動的非線形システムであり、高探索性能が要求される配車ルート(Vehicle Routing Problem)を例にとり、仮定したターゲットの最適解が動的に変化する関数を適用した。その結果、従来手法に比較して最大9%配車コストを削減した。また、従来手法より状況を踏まえた最適なルートの探索方法を実現した。
これらは、現在までのPSOアルゴリズムに関する我々の取り組みと研究成果をもとに、それぞれのPSOアルゴリズムの特長を融合した新しい構想である。今後の予定として、アルゴリズムの研究にとどまらず、ハードウェアの研究開発も視野に入れた展開を行うことで、高速処理が要求される自動車エンジンの燃焼予測ECU(Engine Control Unit)等を試行する。この「アダプティブ・多種探索PSO」構想の具現化は、制御アルゴリズム全般に対する設計概念を大きく変革させるものである。