表題番号:2013B-193 日付:2014/04/11
研究課題省エネルギーSiCデバイス高温実装用Agインタコネクション技術研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 巽 宏平
研究成果概要
SiCチップ電極とワイヤボンディング接続信頼性の評価と支配要因解明:
 予備実験より、Al電極へのAgワイヤの接合は、Al/Ag化合物の形成にともない、ボイドが発生し劣化すると考えられていた。しかしその機構は必ずしも明らかにされていなかった。
そのため、初期のAlの電極厚さ、加熱温度、加熱雰囲気、初期ボンディング強度(初期接合状態)
を変化させ、Al/Ag接合の拡散挙動と接合強度変化を調査した。その結果初期強度が高く、Alの電極厚さが4μmのものでは、300℃、100hの加熱条件でも強度劣化は見られなかった。
 一方、初期強度が比較的低く、Alの厚さが1μmのものでは、同様の加熱条件で、強度は顕著に劣化した。
従来Al/Agの金属間化合物の成長にともない、ボイド形成が進行し劣化すると考えられていたが、ボイド形成は、金属間化合物の形成形態により、ボイド形成の核の生成の有無により異なることが示唆される結果がえられた。
 また加熱雰囲気が大気、真空ではその違いは顕著ではなく、従来報告されているAl/Ag接合対の劣化は、主として、樹脂封止中で認められており、化合物の腐食反応と密接に関連しているものと考えられた。
電極材料の検討では、Ni/AuへのAg接合について検討したが、いずれの条件でも劣化は見られず、安定した接合部の信頼性が確保できるものと考えられた。 またAgワイヤの合金化(Au、Pd)は、大気、真空雰囲気では、接合部の信頼性にかかわる改善は見られないことから、樹脂成分による耐腐食に効果があるものと推定される。なお電気抵抗は合金化により4倍程度となり、今後の実用化としては、優位性が顕著ではなかった。またワイヤ表面の耐腐食コーティングは、有効であり、長時間大気中での放置においても、接合性の劣化は見られなかった。電気抵抗の上昇は1割以下であり、またコスト的な課題も大きくない。今後は、LSIおよびSiCパワーデバイスを想定し、Ni電極層を主とし、厚みならびにワイヤ材料のさらなる高温長時間の拡散挙動への影響を調査する。また太線Agワイヤの超音波接合による塑性変形を考慮した拡散対での界面拡散挙動を評価し実用可能性を検証する。さらに拡散シミュレーションとの比較から、SiCチップ電極とAgワイヤの最適構造の提案を行う。