表題番号:2013B-191 日付:2014/03/11
研究課題次世代不揮発素子の活用に向けたハードウェア設計技術
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 木村 晋二
研究成果概要
 近年の携帯端末および無線センサなどのアンビエントデバイスの発達・普及に伴い、これらの稼働時間を延ばすため、アイドル状態での電源停止制御が重要になってきた。この時、電源復帰後の動作のために内部状態を保存することが必要で、電源停止でも記憶が保持できる次世代不揮発素子が注目されている。
 MTJ (Magnetic Tunnel Junction) に基づく次世代不揮発素子は、アクセスは通常の CMOS SRAM と同等の速度で、集積度は DRAM と同様に高い。しかし、値の書込みにおいては、MTJ 内部の磁場の向きを制御するため、通常の SRAM と比較して10倍程度の書込みエネルギーを必要とし、その削減が急務である。
 そこで本研究では、書込みエネルギーの削減を含む次世代不揮発素子の活用のための設計技術の研究を行った。メモリをROMとして書き換えずに計算結果の記憶に用いる手法の他、書込みそのものを減らす手法を研究した。MTJの書換えは同じ値を書込む場合でも違う値の書換えと同様大きなエネルギーを必要とするので、今記憶している値と書込みたい値が同じ場合に、書込みを停止することが基本となる。ここでは、それと組み合わせてさらに書込み回数を削減する手法を示した。
 まず、順序回路の状態遷移解析に基づき、書換える必要のないレジスタの探索手法を提案し、書換えを停止する条件から停止制御回路の自動生成を行い、電力削減を確認した。
 第二に、値の変化にあたって、変更するビット数を削減する手法の研究を行った。新しい値を元の値と新しい値との差分で表すことで、書き換えるビット数を削減する手法や、最大変更ビット数を制限した符号の研究などを行った。
 第三に入力をアドレス、計算結果をメモリの内容としたメモリベース演算の研究を行った。基本的には入力数に対して指数的な容量を必要とするので、乗算等に対して必要に応じて演算器と組み合わせてメモリ量を削減する手法を検討した。
 最後に、論理素子の制御値の伝播を考慮した細粒度の実行時パワーゲーティングの研究を行った。論理素子の制御値は一つの入力だけで出力を決定できる値である。ある入力が制御値をとると、他の入力の値は不要となり、それを計算する部分の電源を停止できる。この制御値の直列接続での伝播を用いてより多くの素子の電力停止を行う手法を示した。