表題番号:2013B-189 日付:2014/04/01
研究課題機械学習による劣化診断手法の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 犬島 浩
研究成果概要
機械学習による劣化診断手法の研究
1.背景
 機械学習の例題として、橋梁の診断を想定する。橋梁は構造物であり、構造物診断のひとつとして、ハンマリングによる加振試験は、一般的によく用いられている。わかりやすい例としては、鉄道車両の車輪の検査、バスなどのタイヤを固定しているボルトの緩みの検査などがよく知られている。上記の例は、人間の聴覚や触覚による熟練を要する。一方で、ハンマリングを可視化する装置は市販されている。こうした装置によるハンマリング試験では、インパルスハンマで対象の装置に打撃を加え、各部分の振動を加速度センサで計測、FFT で振動数を測定している。これは、ハンマによる衝撃入力に対し、固有振動数を測定している。この振動特性は診断対象固有のもので、主に診断対象の剛性や質量に依存することが多い。
2.方法
橋梁の診断は、このハンマリングによる加振試験の拡張である。ハンマの代わりに重錘と呼ばれる重量物を橋梁に加えて、適当な位置に設置した加速度信号を計測している。一般的なFFTによる試験では橋梁の正常状態と損傷状態では区別ができなかった。次に、FFTは、時間情報を周波数情報に変換してしまい、時間情報の欠如が検出不可の原因と考えた。時間-周波数解析手法である短時間FFT解析を試みたが、同様に区別できなかった。
3.結果
時間-周波数解析手法、連続ウェーブレット変換を適用した。基底関数は一般的によく用いられるガボール関数を選択している。結果はよくなかった。そこで、橋梁の正常状態おけるFFT解析結果から、機械学習のための必要と推定される周波数ピークを4点抽出し、その周波数情報を連続ウェーブレット変換の基底関数であるガボール関数に組み込んだ。その結果、損傷状態の特徴的変化を検出することができた。
4.結論
 実用化に向け、類似度を用いた定量評価を行っている。解析結果のスケール値の大きい部分や時間経過部分の類似度を比較することで、損傷の進行を推定することも可能にしている。また、既設橋梁に対しての応用を想定し、健全状態以外のデータから基底関数を作成する解析も行った。前述解析と比較し、損傷度合いの推定が可能であることも示している。 以上、本研究成果は、機械学習のための特徴抽出に有効であり、橋梁の診断手法の機械学習として期待できるものと考えられる。