表題番号:2013B-182 日付:2014/03/20
研究課題ナノ流体による溶融炉心冷却を目指した限界熱流束性能予測に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 特任教授 師岡 愼一
研究成果概要
1.緒言
 福島原発事故を契機に自然循環を利用した過酷事故時の溶融炉心を無電源で冷却するシステム(PCCS = Passive Corium Cooling System)が検討されるなど、無電源で大きな流れを生み出す二相流の自然循環が注目を集めている。また、ナノ流体によって限界熱流束(CHF=Critical Heat Flux)が増大することは報告者が確認しており、原子炉の苛酷事故対策や熱流体機器への適用が検討されている。つまり、冷却水にナノ粒子を混合し、二相流の自然循環を用いれば、水のみの場合に比較して、無電源で溶融炉心を冷却する能力が更に増大する。このような自然循環を用いたシステムの除熱量は自然循環流量に依存するため、自然循環流量を正確に予測することは安全設計上極めて重要である。本研究の目的は、まずは水単体の場合の二相流での自然循環流量を予測する手法を構築することであり、本研究では実験と解析の両面からアプローチを行った。
2.試験装置の製作および試験結果
 自然循環流量を測定した試験は少ないうえに、自然循環流量を予測するために必要な駆動力と圧力損失までを測定している試験はほとんどない。そのため、空気-水系自然循環試験装置を製作し、自然循環流量・駆動力・圧力損失を検証できるデータを取得した。
3.自然循環流量評価手法の構築
自然循環流量は密度差により発生する駆動力と流動による圧力損失が釣り合う流量である.二相流の自然循環の場合,駆動力の導出における重要なパラメータはボイド率であり,圧力損失の導出における重要なパラメータは摩擦圧力損失,局所圧力損失であれば二相増倍係数,加速圧力損失ではボイド率である。試験データの検討より,ボイド率,二相増倍係数のモデルとしてIshiiのドリフトフラックスモデル,Martinelli- Nelsonモデルを選択した。
4.結論
 本研究で得られた結論を以下に示す。
(1). 大気圧、空気-水系での単流路、多流路における自然循環流量の測定を行い、詳細な試験装置寸法を提示し、自然循環流量予測手法を検証する単流路・多流路試験データを提供することができた。
(2). 本手法により、単流路そして多流路の二相流自然循環流量を予測できることを明らかにした。