表題番号:2013B-178 日付:2014/04/07
研究課題ゲノムの多様性創出と継承を連携させる微小管システムの解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 佐藤 政充
研究成果概要
 本研究では、分裂酵母の微小管形成がどのようにおこなわれるかについて研究を継続している。体細胞分裂においては、複製された染色体を2個の娘細胞に分配するために、微小管からなる紡錘体が形成され、染色体の動原体部分を左右から引っ張ることで、染色体を1:1に正確に分離することができる。
 紡錘体微小管形成の分子メカニズムを解明するために過去数多くの研究がおこなわれており、その成果として、多くの微小管結合タンパク質や分裂期キナーゼが必須の役割を担うことが明らかにされてきた。
 しかしながら、特に紡錘体形成の初期にどのような分子が働くことが大切であるのか、既知の因子だけでは全体像に未だ到達できないのも事実であり、本研究では、分裂期の前期から中期にかけて、微小管形成に関わる因子を探索してきた。具体的には、我々がこれまで作製してきたGFP-tubulin、mCherry-核膜、CFP-中心体(SPB)の3色を発現する細胞株を作製し、これを野生型株として突然変異原処理をおこない、微小管の形態異常を示す変異体を検索するスクリーニングをおこなった。その結果、2,000を超える変異体が単離され、これを表現型ごとにクラス分けした。その中でも我々は、分裂中期以前に、微小管形成に異常を示すものに着目し、そのなかのひとつの変異体について重点的に解析を進めている。この変異体をkis1変異体と名付け、その原因遺伝子を調べたところ、未知のタンパク質をコードすることが分かった。
 このkis1変異体が微小管形成のどのステップに異常を示すのかを解析したところ、前中期の紡錘体形成や、中期程度で紡錘体形成の維持に欠陥があることが分かった。
 我々は、このkis1変異体では微小管形成中心であるSPBの機能に欠陥があると予想したが、これまでのところ、SPB構成因子の局在には問題が見つかっていない。これに対して、kis1変異体では、一部の動原体因子が正しく動原体に局在できていないことが分かった。これらの結果から、Kis1タンパク質は、動原体の構成維持に必須の新規因子であり、動原体の構成を介して紡錘体微小管を安定化させていると考えられる。