表題番号:2013B-153 日付:2014/04/02
研究課題海洋生物由来抗原虫活性化合物のケミカルバイオロジー研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 中尾 洋一
研究成果概要
リーシュマニア症はサシチョウバエによって媒介される節足動物媒介性人獣共通感染症であり、WHOによって対策の最も困難な熱帯感染症(カテゴリーI)として位置づけられ、重点対策10大熱帯感染症の一つにも指定されている。そこで本研究ではユニークな構造と生物活性を有する化合物の宝庫である海洋生物を探索源として、抗リーシュマニア薬開発につながるような化合物の探索を行うこととした。
本研究では緑色蛍光タンパク質(GFP)導入原虫を用いた迅速な抗原虫活性評価法を用いて、幅広く海洋無脊椎動物抽出物について研究分担者後藤がスクリーニングを行い、抗リーシュマニア活性化合物の探索を行った。スクリーニングにより活性が認められた海綿サンプルについて、活性化合物の単離を試みた結果、ミクロネシア産海綿に含まれる抗リーシュマニア活性化合物を単離・同定することができた(学会発表1)。
一方、以前の研究で見出された強い抗リーシュマニア活性を有する化合物cristaxenicin Aについて、in vitroの活性評価および作用メカニズム解析のためのプローブ開発に向けて、研究分担者の細川が全合成研究を継続している。
また、これまでに得られている抗リーシュマニア活性化合物ciliatamideについて、研究分担者木村がciliatamideを構成する環状アミノ酸部(c-Lys)、アミノ酸部(Me-Phe)、脂肪酸部を入れ替えた類縁体ライブラリーを合成し、活性評価を行った。この結果、c-Lysは環状アミンでも代替がきくこと、Me-Pheの他のアミノ酸への置換は活性に大きく影響すること、脂肪酸部分は炭素数が10程度のものが望ましいことが明らかとなった(学会発表2)。本化合物は比較的単純なユニットで活性を保持した誘導体を簡便に合成できるため、今後のin vitro活性評価や作用メカニズム解析のプローブ分子への転用が期待できる。