表題番号:2013B-151 日付:2014/04/11
研究課題優れた物性と機能を併せ持つ超分子型コラーゲン様マトリックスの設計
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小出 隆規
研究成果概要
本研究では、安全、高機能かつ、フレキシブルに分子デザインの変更が可能な、人工コラーゲン様マトリックスの作成を目指した。化学合成したペプチドの自己集合によってコラーゲン様超分子を作成するにあたっての問題点は以下の3点に大別できる。伸長する長い3重らせん超分子の形成、超分子ハイドロゲルへの優れた物理的強度の付与、および細胞の機能を制御するための機能性アミノ酸配列の導入、である。
 すでに我々の研究グループは、コラーゲン様超分子の作成法として、超分子の伸長を伴いながら3重らせんにフォールディングできるコラーゲン様ペプチドのデザインを報告している(Yamazaki, et al. Biopolymers 2008)。しかし、この方法はスケールアップが困難でありコスト的にも見合わないため、①これらの問題を解決しうる別の超分子デザインについて検討した。また、②3重らせんペプチド間でのクロスリンク形成によるハイドロゲル物性の向上についても検討した。

①3重らせんペプチドを連結して超分子化させる方法の検討
 コラーゲンを構成するアミノ酸配列である(Gly-X-Y)nの末端に反応性官能基を導入したペプチドを化学合成し、低温で3重らせんにフォールディングしたのちに、二あるいは三官能性の低分子リンカーをもちいて3重らせん同士を連結した。このような多官能性リンカーを用いたペプチドの連結では、ゲル化能を持つ超分子は形成されなかった。一方、3重らせんペプチド間の直接的な共有結合形成による連結法においては、ゲル化能を持つ3重らせん型超分子を与える条件を見出した。(知財保護の観点から、詳細については記述しない)

②3重らせん間でのクロスリンク法の検討
天然のコラーゲン3重らせんは、リボフラビン存在下で紫外線(UVA)照射によりクロスリンクが架かり、ゲルが硬化することが確認された。また、アミノ酸分析からこの反応にはチロシン残基が関与していることが確認された。しかし、リボフラビン+UVAによる反応では、可溶性の3重らせんペプチド同士をクロスリンクし、ゲル化させることはできなかった。