表題番号:2013B-142 日付:2014/04/11
研究課題機能性円偏光光源のための高スピン偏極長寿命In系化合物半導体
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 竹内 淳
研究成果概要
 機能性円偏光光源のための高偏極長寿命In系化合物半導体の研究においては、InP基板上に成長したInGaAsPバルク、低温成長GaAsバルク、Beドープしたp型GaAsバルクのスピン緩和時間を、時間分解ポンプ・プローブ測定や時間分解フォトルミネッセンス測定で調べた。
 InP基板上に成長したInGaAsPバルクは、10Kで波長1160nm付近に発光ピークがあるが、円偏光ポンププローブ時間分解計測では、この発光ピーク近傍の波長でスピン緩和過程を観測した。その結果、励起光強度10mWで980psのスピン緩和時間が得られた。また、このスピン緩和時間は励起光強度を変えると変化することが分かった。さらに測定温度を室温まで上げると、スピン緩和時間は95psまで速くなった。これらのスピン緩和時間の温度依存性と励起光強度依存性から、10-30Kでは、Bir-Aronov-Pikus効果が支配的であり、100-300KではD'yakonov-Perel'効果が支配的であることが明らかになった。
 In系化合物半導体との比較のために、Inを含まないGaAsバルクのスピン緩和時間もあわせて調べている。Beドープしたp型GaAsバルクでは、10Kで1.511 eVと1.497 eVの二つのフォトルミネッセンスピークが観測され、それぞれ10-100Kで1-3nsの比較的遅いスピン緩和時間が観測された。前者はBeアクセプターに束縛された励起子のスピン緩和であり、後者はバンドからアクセプター準位への遷移に関与するスピン緩和であると考えられる。両者のスピン緩和時間かほとんど同じであることから、ともに伝導電子のスピン緩和を観測しているものと考えられる。また、低温成長GaAsバルクでは、10Kで2ps、28ps、158psの3成分の高速のスピン緩和が観測された。この結果からキャリア散乱によりスピンが反転するElliott-Yafet効果が効いている可能性が高いことがわかった。