表題番号:2013B-141 日付:2014/04/11
研究課題波面符号化による超深度イメージングシステムの高度化
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小松 進一
研究成果概要
波面符号化(WFC:Wavefront Coding)による超深度イメージングシステムの高度化を目標として,3次位相板(CPM: Cubic Phase Mask)と自由曲面位相板(FPM:Free-form Phase Mask)を用いたシステムの深度拡大効果を以下に示す多角的なアプローチから検討を加え,種々の知見を得た。
まず,CPM-WFC顕微鏡について,比較的NAの高いシステムを組んで実験を行い,深度拡大特性を検討した。システムの主な構成要素のうち,ニコン倒立顕微鏡(ECLIPSE TE300)は,ハロゲンランプ(6W,30V)を光源とし,対物レンズ(CFI S Plan Fluor ELWD ADM )は倍率20倍,NA=0.45である。挿入した円形CPMの規格化3次係数の値はα=69,直径は12.5mmであるが,絞り径(12mm)の制限を受け,実効値はα=61であった。撮影系は,Canon EOS 5D(CMOS) のイメージセンサー部を用い,有効画素数は 4368×2912pixel,1画素の大きさ8.2×8.2μmであった。撮影条件は,ピンホール(1μmφ)を用いた点像分布関数(PSF)については,ISO 1600 で露光時間 1/5s,USAFテストチャートおよび羊毛の糸を物体とした中間画像については,ISO 100で露光時間 1/20sであった。
実測PSFに含まれるノイズ成分の影響を除去するため,平均化とバイアス成分の引き算を行った結果,細部の復元が可能になった。デジタル復元にはウィーナーフィルターを用い,デフォーカス量50μm(デフォーカスパラメータΨ=50)においても,グループ番号7,ライン番号6が明瞭に識別でき,CPMを挿入しない通常光学系に比べて数十倍の深度が得られることを確認した。実測PSFの代わりに,光学設計ソフトによるシミュレーションPSFのを用いることにより,復元画像の画質が向上した。今後の課題は,ブラインドデコンボリューションによるPSF推定を利用してさらなる改善を図ることである。
このほか,波面コード化における円形開口用位相板の最適化,波面コード化のビーム走査型結像光学系への応用においても,それぞれ有用な知見が得られた。