表題番号:2013B-140 日付:2014/03/20
研究課題動的多様系科学の創成 - <渦> の発見的応用
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 小澤 徹
(連携研究者) 理工学術院 教授 柴田良弘
(連携研究者) 理工学術院 教授 吉村浩明
(連携研究者) 東京大学新領域創成科学研究科 教授 吉田善章
(連携研究者) 核融合科学研究科ヘリカル研究所 准教授 三浦英昭
研究成果概要
様々な特異現象に普遍的に現れる<渦>の本質を探る為、数学的設定が明確に記述可能な、流体やプラズマにおけるモデル方程式の初期値問題の解に現れる特異性の研究を行った。流体の速度場や渦度の爆発現象の研究では、爆発時刻が有限であれば時空の適当なノルムが無限大となる事が期待されており、実際多くの時空のノルムが無限大となる事が証明されているが、その相互関係については不明な部分も多く、最弱ノルムも同定されていないのが現状である。本研究ではナビエ・ストークス方程式とQテンソル系の連立系について、その最弱ノルムの同定を目指し、ナビエ・ストークス方程式で現在迄知られている最良の結果に相当する条件を、負の可微分性を示す斉次ベゾフ空間で与え、スケール不変性の観点から自然な形で説明出来る形に整備した。空間2次元の電磁流体力学の連立系については、水平方向の流体速度場の散逸構造と磁場の拡散係数との間に、爆発現象を抑制する積分構造を見出し、電磁場と速度場の相互作用に現れる特異性を部分積分を通じて消滅させる方法論を確立した。これは双曲型の非線型偏微分方程式である非線型波動方程式連立系の研究で見出された零構造に相当するものと考えられ、双曲型と放物型の非線型偏微分方程式の連立系における零構造の研究の出発点となるものと期待される。プラズマ系に現れる渦については、三波相互作用系としての非線型シュレディンガー方程式の連立系をモデル方程式として、その爆発解の発現機構について研究した。単独方程式では初期データが閾値より小さいと爆発は起こらない事が知られているが、連立系はそうとは限らず、任意に小さなデータを取ったとしても有限時刻で必ず爆発現象を起こす相互作用を見出し、この現象は連立系特有のものである事を明らかにした。実際の物理モデルでは単独系より連立系が圧倒的に多く用いられるので、プラズマにおける<渦>はどんな小さな初期状態からも発生する可能性があると云う事情を充分説明するものと考えられる。