表題番号:2013B-137 日付:2014/06/11
研究課題複雑ポリケチド類の革新的合成法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 細川 誠二郎
研究成果概要
新規立体選択的反応を開発し、それを天然物合成に応用した。本年度は、E,E-Vinyllketene Silyl N,O-Acetalの立体選択的アシル化反応の一般性の検証と立体選択的ブロモ化反応の開発に成功した。いずれも遠隔不斉誘導型反応である。アシル化反応では、アシル化剤として酸無水物、ルイス酸として塩化スズ(IV)を用いた際に最も良い結果を与えた。特に酸無水物においては、嵩高いピバル酸無水物以外の脂肪酸無水物で単一異性体として得られた。一方、芳香族カルボン酸無水物は全く反応しなかった。また、脂肪酸無水物においても、環状の酸無水物は反応しないことから、塩化スズ(IV)が酸無水物にキレーションすることが反応を促進する要因となっていることが推察される。また、α位に不斉炭素を持つ酸無水物も反応して光学活性な単一生成物を与えることから、反応中間体としてケテンが発生しているのではないことが証明された。このアシル化反応を用いて、抗生物質khafrefunginの効率的合成経路を確立した。それまでkhafrefunginのポリプロピオネート部の合成としては、14工程が最短であった。本研究では、申請者が開発した還元型プロピオネート合成法と不斉アシル化反応を組み合わせることにより、わずか七工程にてポリプロピオネート部を合成することに成功した。一方、ブロモ化反応においては、E,E-Vinyllketene Silyl N,O-AcetalをFcCl3と混ぜているところにBr2を反応させることにより、15:1以上の選択性でブロモ化が進行することがわかった。さらにこの生成物の臭素をアジ化ナトリウムと反応させることにより、窒素官能基を導入することに成功した。また、これをアミンに変換し、新しいタイプのアミノ酸ビニローグの合成に成功した。さらに、この反応と還元型プロピオネート合成法を併用することにより、抗生物質pellasoren Aの形式合成に成功した。