表題番号:2013B-136 日付:2014/02/26
研究課題晶析工学による金属ナノ粒子粒径制御
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 平沢 泉
研究成果概要
ナノサイズ領域の金属粒子創製法として、過飽和度制御で還元晶析を行う手法を提案し、原料供給速度、溶液内環境(pH、種結晶量)が還元晶析過程いおける核化、成長に及ぼす影響を解明し、希望の形状、粒径分布を有するナノ金属懸濁液を得るための最適操作条件を確立した。従来、単分散ナノ金属を創製する手法として、塩基性高分子電解質であるPEIを用いることを提案したが、100nm-400nmの粒子を制御することができず、原料供給速度、溶液内環境(pH、種結晶量)を最適条件にすることで、100nm-400nmの粒子を、自在に生成することが可能になり、粒径分布幅も狭くすることを達成できた。これにより、簡易に金および白金の粒子を還元晶析生成する手法およに戦略を提案できた。当研究室の成果を評価した農林省農業生物資源研究所より、葉緑体への遺伝子導入用担体として、所定粒径の金ナノ粒子の調整を依頼され、要望のものが作成でき、植物形質転換用粒子し、適用しすぐれた導入効率を達成した。
未発達なプロプラスチドへの形質転換効率の向上を将来的な目的とし、従来使用されている金粒子よりも微小なサイズの金粒子を作成し、葉緑体形質転換法へ利用可能であるかを検討した。まず、微小金粒子の作成はシングルジェット法で行い、溶媒にはアスコルビン酸溶液を用いる条件を検討した。その結果、平均粒径0.067±0.016 ミクロンメータ (最大粒径0.119 ミクロンメータ, 最少粒径0.032 ミクロンメータ)の金粒子(以降、微小金粒子と記載)を作出することができた。次に、微小粒子によるタバコの葉緑体形質転換実験を行った。その際、0.6 ミクロンメータの金粒子(BioRad社)をコントロールとした。導入ベクターには選抜マーカー遺伝子であるaadAおよびGFPを発現するpNtagを作成して用いた。1プレートにつきタバコ葉片(5 mm角)を約50個並べ、pNtagを2g塗布した金粒子を2回導入した後、スペクチノマイシン500 mgL-1を含む再分化培地において選抜を行った。2プレートへの遺伝子導入を1実験とし、3反復実験を行った。微小金粒子をヘリウムガス圧1,100 psiで導入したところ、1実験平均3.3±1.2個体の葉緑体形質転換体が得られ、1,350 psiの条件では2.3±0.9個体得られた(表1)。0.6ミクロンメータの金粒子においては1実験平均4.7±3.4個体であった(表1)。これより、微小金粒子を用いた場合においても0.6ミクロンメータの金粒子と効率に有意差がなく葉緑体形質転換体が作出できることがわかり、これまで困難と思われたプロプラスチドへの遺伝子導入へ利用できる可能性が示された。今後、微小金粒子の作成条件のさらなる改良、遺伝子導入条件の最適化を行うことで、これまで技術が確立されていない植物種における葉緑体形質転換系の確立が期待できる。粒子の表面状態も、pHや熟成状態で制御できるめどができ、さらなる精密制御の道が開けた。