表題番号:2013B-134 日付:2014/04/06
研究課題3次元ナノ界面の大規模創製と、蓄電デバイス電極への展開
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 野田 優
研究成果概要
①シリコン系合金多孔質厚膜の急速蒸着およびポーラス電極の蓄電応用検討
・シリコン多孔質厚膜の急速蒸着と微細構造制御:我々はシリコン蒸着源を2000℃以上と高温にすることで、従来より数桁高い10 µm/min前後の蒸着速度を実現している。本研究では、充放電サイクル後に理想的な定常構造を得るべく初期構造を作り込んだ。即ち、基板温度400℃以下にて非晶質膜を得、柱状構造の太さ、空隙、膜密度を制御した。更に、熱アニールにより非晶質シリコンの結晶化を防ぎつつ、シリコンと銅の相互拡散層を形成して密着性を向上した。
・単一蒸着源による合金多孔質厚膜の急速蒸着:シリコンは理論容量が非常に高く、他金属と複合化しても十分な容量を保てる。銅と共蒸着して銅集電極を3次元化し、劣化抑制と導電性向上を試みた。銅はシリコンと蒸気圧が近いため、単一のルツボにともに仕込んで共蒸着し、走査型電子顕微鏡(SEM)-エネルギー分散型X線分光法(EDS)により組成傾斜構造を確認した。
・充放電特性評価:充放電評価装置を導入し、上記のサンプルの充放電特性を評価し、サイクル特性の向上を確認した。
②長尺CNTの連続合成、良導性CNTスポンジの開発、およびソフト電極の蓄電応用検討
・流動層法での長尺CNTの層数制御:我々は独自のCVD触媒担持法を用い、平均3層と細く400 µm程度と長尺な数層CNTの流動層合成を実現、バインダーレスで良導性の自己組織化ネットワークの自立膜を実現している。CNTの層数が少ないほど自立膜の導電性が向上するが、一方で、二層以上では内層で導電、外層に官能基導入と、機能分担ができるため、CVD担持法に加え液相含浸担持法により触媒の構造制御とCNTの層数制御を進めた。
・CNTスポンジの作製基礎技術の開発:CNTを溶液に分散しろ過すると、ネットワーク状膜やスポンジ構造を実現できる。キャパシタ・電池電極利用では種々の活物質と複合化するが、CNTと活物質を同時にろ過するか、CNT膜を形成してから複合化するか、大きく二つのルートがある。目的に応じて分散・膜形成手法を選択できるよう、基礎技術を培った。
・長尺CNTと活性炭の複合化による電気化学キャパシタ電極の開発:活性炭は高い比表面積を有しキャパシタの活物質に有効だが、導電性に乏しいため通常は導電助剤とバインダーを用いて金属集電体に塗布し電極化する。一方で我々の数層CNTはバインダーフリーで自立膜を形成でき、導電性が高く、集電極としても機能し得る。バインダーフリーでCNTと活性炭の複合体を作製、キャパシタ電極特性の評価を進め、開発した活性炭-CNT複合電極が実際に金属集電体フリーの軽量・高容量電極として動作することを確認した。
・長尺CNTと二酸化マンガンの複合化による電気化学キャパシタ電極の開発:酸化マンガンは、酸化還元反応により高い容量を有すが、導電性に乏しいことが課題である。そこで、我々の数層CNTの分散・ろ過で作製したCNTスポンジを電極とし、二酸化マンガンをCNTスポンジ中に電析し、複合電極を作製した。電気化学評価を行い、低レートでは活性炭-CNT複合電極と同様の高容量が100 μm程度と十分に厚い電極で得られることを確認した。