表題番号:2013B-129 日付:2014/04/11
研究課題電気化学デバイス工学に立脚したバイオセンサおよびナノ材料の応用研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 逢坂 哲彌
研究成果概要
電気化学ナノテクノロジーを機軸とした「固液界面制御による新機能発現のための材料開発研究」と「界面構造や界面現象の実践的な活用によるデバイス開発研究」を基盤として、電界効果トランジスタ(FET)を利用したバイオセンサおよび磁性酸化鉄ナノ粒子(MNPs)を利用した低侵襲治療用ナノ材料の開発を指向した研究に取り組んだ。
FETバイオセンサは、FETのゲート絶縁膜表面に吸着した検出対象物質の電荷を検出するデバイスであるが、本研究では特に、予め表面に固定化した帯電物質が対象物質と反応することによる変化を対象とし、その界面や機構に関する考察を行った。具体的には、細胞外マトリックスを分解する酵素であるマトリックスメタプロテアーゼ(MMP)を検出対象とし、細胞外マトリックスの一つであるフィブロネクチンをゲート絶縁膜上に固定化したFETにおいて、MMP-2によるフィブロネクチン分解をFET応答として検出する系に対して検討を行った。その結果、応答量が反応溶液のpHや反応温度、反応時間に依存することが確認され、また、応答量のMMP-2濃度依存性も確認された。対象物質の濃度と反応(分解)量およびFET応答量の関係について、界面反応のモデル化を含めて検証を行っている。
MNPsは、磁気ハイパーサーミア(がん温熱療法)への応用が期待される材料であるが、その表面修飾による表面(界面)特性の制御は、細胞への取り込み量や特異性、生体環境下での動態の制御に有用である。本研究では、特に乳がん細胞への取り込み効率を検討対象として、MNPs表面のポリエチレンイミン(PEI)による修飾の効果をin vitroで検証した。その結果、PEI修飾に伴う乳がん細胞へのMNPs取り込み効率の向上と、それに起因する交流磁場照射下での到達温度および細胞死滅率の上昇が確認された。取り込み効率の向上はPEIによるMNPs表面の正電荷の増加によるものと考えられ、1細胞あたりのMNPs取り込み量が粒子発熱による到達温度に影響することが確認された。