表題番号:2013B-115 日付:2014/04/04
研究課題品質不具合を分析するための新しい手法の開発
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 棟近 雅彦
研究成果概要
ハードウェア製品の品質不具合の分析において,人が不具合について観察,観測したデータは,有効な情報をもたらす.このようなデータは,近年デジタルカメラやビデオ,音声記録装置などで安価で精度よく記録されるようになっている.しかし,そのデータを直接分析する手法は開発されておらず,不具合分析において有効に活用されていないのが現状である.
本研究では,品質不具合の原因追究を効率的に行うために,動画,静止画,音声など,従来のSQC(統計的品質管理)手法では直接解析することのできなかった生データを分析するための方法を開発することを目的とする.
 本特定課題における研究では,上述の新しい手法を開発するための準備として,対象となるデータにはどのようなものがあるか,どのような分析を行うことが有用か,そして新たな分析手法を開発するにあたっての課題は何かを明らかにすることに焦点を絞った.調査対象の製品は,自動車と半導体とし,自動車については市場不具合を,半導体については主に工程内不良を対象とした.
 まず,自動車の市場不具合データについて分析した結果,写真,動画,音声データが不具合の解析に活用できることがわかった.また,画像(写真,動画)に関して詳細な分析を行ったところ,不具合解析において,以下の有益な情報が得られることがわかった.
・破損,折損,亀裂,詰まり,変形,ショート,脱落,抜け,漏れ,変色のような目に見える故障モードに関しては,画像データは現象の把握に有益な情報をもたらす.
・火災,発煙,油漏れ,水漏れ等の故障モードの影響を画像で捉えることにより,故障モード,故障部位などを推測できる場合がある.
・水漏れ,油漏れ等は,静止画像よりも,動画の方が有益である.
 これらの画像データを直接分析することにより,故障の影響(火災,漏れなど)から,故障部位,原因を推測する,あるいは異音から故障部位,原因を推測する,といった目的に利用できる可能性があることが示唆された.
 さらに,半導体製造工程でのデータを調査した結果,ゴミや欠け,割れといった不具合の傾向分析に画像データを用いることが有効であることがわかった.
 これらのデータの分析手法としては,いくつかの従来手法が適用できることもわかった.例えば,音であれば次数比分析,トラッキング解析など,画像であればパターン認識に類するいくつかの手法が適用可能である.一方,これらの手法を適用するためには,画像でも音声でも,データを採取する際の対象からの位置決めをどのように行うかが,精度の高い分析を行うための課題となることがわかった.