表題番号:2013B-113
日付:2014/04/21
研究課題利用者視点による言語サービス連携の受容性予測モデルと連携デザイン手法構築
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 | 教授 | 菱山 玲子 |
- 研究成果概要
- Web上で蓄積されるマルチメディアコンテンツに関する情報取得手法のひとつとして,タグ付けされたコンテンツ内容の記述を活用してマルチメディア情報を取得する手法がある.しかし,この方法は付与されたタグが適切でない場合には有効に機能せず,これがマルチメディア情報取得の新たな課題として挙げられている.更に,コンテンツ内容の記述はもともと多言語で付与されている.よって,単言語による検索クエリやタグ情報を利用するだけでは,コンテンツの適切な取得が困難と予測される.一方,利用者視点からは,検索クエリとして情報の詳細さを記述しきれず,利用者自身が検索クエリを適切に書き起こせない場合が想定されるなど,検索クエリ作成の難しさも課題として挙げられる.
そこで,本研究ではマルチメディアコンテンツのひとつである静止画像を対象とし,言語サービスとしての機械翻訳サービスの連携から利用者の検索クエリを多言語化し,検索結果を得るまでのプロセスを改良することで,利用者意図に沿った適切な画像取得を実現した.この実現にあたって,画像を入手する過程に差異増幅型フィードバックを適用するが,これを効果的に利用するためには,検索対象となり得る画像を幅広く入手しておき,利用者の適正画像の受容範囲がより適切なものとなるよう導くことが必要である.すなわち,フィードバック時に利用者が適合画像として選択する画像群の候補集合を拡張することが効果的である.そこで,この候補集合の拡張を行うため,画像検索前に機械翻訳サービスを用いてユーザ使用言語で記述された検索クエリを多言語に翻訳すると同時に,メタデータとして多言語情報を連携させて利用した.これにより,コンテンツ内容の記述を多言語で補填しながら,検索対象とするタグ候補と量を増大することで,検索精度を向上させた.評価実験は,欧州のランドマーク静止画像のうち特殊な撮影アングル・特殊なライトアップ状況を有するものを対象に,各国語によるクエリによる検索結果比較(実験1)と,各国語によるクエリの組み合わせによる検索結果比較(実験2)により行った.
実験の結果,現地言語では開始時で多くの適合画像が入手できるが,日本語では1件も出力されなかった.これにより,検索クエリの言語は開始時の検索結果に影響を及ぼすことがわかった.また,利用者のクエリを現地言語に翻訳し追加することで,追加前は適合画像が1枚もなかった言語でも追加後は多数の適合画像が入手できることがわかった.特に,適合画像は,利用者の使用言語でタグ付けされたものよりも検索対象の現地の言語でタグ付けされたものに多く存在する.そしてクエリに現地の言語を翻訳したものを追加することで,開始時に多くの適合画像を得ることができることがわかった.
検索クエリ生成時の言語選択は,検索結果に大きな影響を及ぼし,利用者意図に沿った検索の実現にも影響を与える.対象画像の地理的情報を効果的に利用し検索クエリの言語を選択することで,利用者のサービスの受容性を高め,適合画像を容易に取得することができることがわかった.今後の課題は,更に多様な画像による評価を行うと共に,クエリが複雑で翻訳が困難な場合を考慮した方法を検討することである.