表題番号:2013B-112
日付:2014/04/04
研究課題デジタル考現学を用いた都市の社会的イメージ構造の解釈とマッピング技術に関する研究
研究者所属(当時) | 資格 | 氏名 | |
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(代表者) | 理工学術院 | 助手 | 馬場 健誠 |
- 研究成果概要
- 我が国において高度成長期以降、地域全体の調和・美観・伝統を軽視した構造物が次々と建造され自然 景観やまちなみとの調和や地域ごとの特色が失われつつあり、2005年に「景観法」が定められた。こ の景観法の改正により、多様なレベルの景観行政において、都市・地域・街なみの固有性を守り・育む取 り組みが進み大きな成果をあげているが、実践的な計画技術に関する蓄積は不十分である。 都市空間の構造を読み解く古典として、クリストファー・アレグザンターのパターンランゲージ理論な どがあげられるが、その実践は建築ないし街区的なスケールにとどまり、都市全体を俯瞰した広がりのあ る空間スケールへの応用には至っていない。また、物理的空間形成を基盤としている為、多様な人々によ る空間の共有やその可能性における視点にも限りがある。
一方、ドローレス・ハイデン (Dolores Hyden) は「場所の力」(Power of Place)において、一般市民の 生活の歴史(パブリック・ヒストリー)に計画の根拠を見出そうとし、その歴史の記憶が帰結する「場所」 の存在の重要性について論じている。こうした、ハイデンの理論を受け、近年の欧米での地域資源の活用 を重視したコミュニティー再生の事例では、プレイス・メイキング (Place Making) を中心概念と位置づけ られる事が多い。また、我が国において場所の性質を読み取る手法として、現代の社会現象を場所・時間 を定めて組織的に調査し、世相や風俗を分析・解説する考現学があげられるが、多様な市民が共有できる 象徴的な「場所性」の創出やわかりやすい空間ビジョンを示すプロセスは未だに確立できていない。 しかし、かつて考現学の提唱者である今和次郎が詳細なスケッチを通じて現代の社会現象を分析・解説 した頃と比べ、様々なスマートデバイスやアプリケーション等が開発され、これらを活用し都市の社会的 イメージ構造を再解釈することによって多様な住民における空間の共有や生活に密着した計画技術の構築 が大いに可能性として広がっている。
以上の背景から、「考現学」は今和次郎によって提唱された学問領域であり、詳細なスケッチ等を通じて、数字だけでは把握しづらい現代の社会現象を、調査・分析する点にその特徴がある。近年、様々なスマートデバイス やアプリケーションが日常生活に浸透する中、考現学が提唱された当初と比べ、その調査と分析の手法 に関して模索しうる新しい可能性は大いに広がっている。 本研究では、情報技術の進歩した現代社会において、考現学の可能性を広げ、都市の動態をより克明 に描き出すことができる新たな手法として、携帯型デジタル端末に着目する。その中で生活者が都市空 間に捉える価値観や意味を「社会的イメージ空間」とし、その解釈技術と空間的マッピング技術の構築 をめざす。これらを通じて、今後の都市デザイン・計画分析における多様な人々の「社会的イメージ空間」 を地理的な基盤情報として提示することを研究の目的とする。
研究の目的を推進するにあたり本年度では、以下の3点に関連した研究を進めた。
①まちなみ景観計画の構築行うにあたり100人を 対象としたオーラルヒストリー調査を実施データを用いて、「過去の社会イメージ構造」の把握を行なった。個人のライフヒストリーの定量的分析(テキストマイニング)と生活環境イメージを可視化する手法によって生活環境イメージの構造を明らかにし、地域まちづくりに対した効果的なライフヒストリー活用を可能にする方法の検討を行なった。
②ICT技術を活用し市民参加を促す計画支援ツール(シビック・アプリ)の開発者とアプリを活用している行政機関に対して、データベース分析とヒアリング調査を通じて、収集されているシビック・ビッグデータの性質及び、アプリ開発やデータ活用時における一連のプロセスからみた課題。
③I B M 社の T e x t