表題番号:2013B-106 日付:2014/06/12
研究課題低品位ケイ酸塩資源からの高機能性細孔質ジオポリマー素材の創製
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 山崎 淳司
研究成果概要
 高強度バルク体を形成するケイ酸塩ポリマー(ジオポリマ―)の調製には、メタカオリンやフライアッシュなどのケイ酸塩原料または活性化したアルミノケイ酸塩原料に、水ガラスとアルカリ水酸化物の混合溶液を混合し、比較的低温で湿潤養生するとシラノール基の脱水縮合反応により架橋結合してポリマー化させて行うのが基本である。このプロセスで得られる硬化体は、既存のポルトランダイトセメントを上回る圧縮強度を発現することが知られている。
 現在、多くの研究機関・企業等で主に建築・建設材料への応用研究・開発が進められているが、実用に至った例は多くない。これは、ジオポリマーセメントについての知見が、既存のポルトランドセメントに比べて圧倒的に少なく、とくにコンクリート構造体にするために必要な可使時間等の物性の発現機構やポリマー構造の制御方法が十分に解明されていないためである。さらに、ジオポリマー物質が有するアルミノケイ酸ネットワークの規則性(細孔構造)やその生成機構および合成(制御)方法については、ほとんど解明されていないのが現状である。
 現在、最も課題となっているのは、建設用構造材料に用いるジオポリマ―の主原料となる各石炭火力発電所から発生するフライアッシュの反応活性が、たとえ同ボイラーシステムであっても石炭種、オペレーション、集塵装置によって非常に大きく変動することがわかっている。そこで、活性の異なる5種類のフライアッシュについて偏光顕微鏡およびSEM像観察により検討し、この活性の変動がフライアッシュのムライト・石英を取り巻くガラス質を被覆する炭質層の状態に大きく依存することを見出した。また、天然カオリナイトやハロイサイトの焼成物であるメタカオリンは、共生鉱物、共存元素、焼成条件によってジオポリマ―化の反応活性が大きく異なることがわかった。現実的なコストでの生産を念頭に置くと、低品位のメタカオリンの利用が優先的になる。また、現在は低品位とされて採掘されていなかったり、精製プロセスで尾鉱となっているゼオライト岩を加処理やメカノケミカル摩砕処理等によって活性化したものも原料として有効であることがわかった。