表題番号:2013B-105 日付:2014/04/10
研究課題大気中界面活性物質の起源・動態・界面活性能の解明
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 大河内 博
研究成果概要
1.研究目的と概要
 大気エアロゾルと大気水相(雨,雲/霧,露/霜,林内雨)中の界面活性物質濃度を明らかにし,その起源,大気圏動態,界面活性能の解明を目指して,大気中イオン界面活性物質濃度の簡易迅速定量を確立し,都市,郊外,山間部,自由対流圏における大気中陰イオン性界面活性物質濃度を明らかにすることを目的に行った.さらに,主要な界面活性物質と考えられるフミン様物質を定量し,季節変化,経時変化の解明を試みた.

2.研究成果概要
①メチレンブルー吸光光度法は操作が煩雑であり,誤差が生じやすいことから,メチレンブルー吸光光度法を大気試料に適用するため,再現性が高く,より高感度かつ迅速な陰イオン界面活性物質(MBAS)の定量法を検討した.その結果,50 mLガラス製遠沈管を1本用い,20回手で攪拌後に,振とう機(1000 rpm)で5分間振とうすることにより,0 - 0.12 µMの低濃度範囲で直線性が高く(r = 0.996),高感度(検量線の傾き:1.07 µM-1)の検量線が得られた.最適条件を用いたエアロゾル捕集用の石英繊維フィルター水抽出液(ブランク)からのドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の添加回収率は94.7 ± 3.3 %(n = 3),エアロゾルを捕集した石英繊維フィルター水抽出液(実試料)からの添加回収率は92.3 ± 1.5 %(n = 4),降水試料からの添加回収率は90.8 ± 3.5 %(n = 3)であった.このことから,本法は陰イオン界面活性物質の抽出・分析方法として大気試料に適用可能であった.本法を,2011年5月に採取した都市大気エアロゾルに適用した結果,陰イオン界面活性物質濃度は44.9 - 163 pmol/m3(n = 8)の範囲であり,平均は84.3 pmol/m3 であることが分かった.
②東京都新宿区に位置する早稲田大学西早稲田キャンパスで、大気エアロゾル中フミン様物質(HULIS)の定量を行った。試料採取はハイボリウムエアサンプラーにて昼夜12時間毎(6:00 – 18:00、18:00 – 6:00)に行い、 DEAE-UV法でHULISをフミン酸、フルボ酸分画に分けて分析した。その結果、HULIS中90 %をフルボ酸が占めていることが分かった。HULIS濃度は夏季に低く、秋・冬季に高いという季節変化を示すことが分かった。年間を通じて、HULIS濃度はNO2、CO濃度と相関が見られたことから、都市域におけるHULISは自動車などの移動排出源から主に生成されていることが示唆された。夏季にはOxと正の相関があり、一次生成以外に二次生成の可能性が考えられた.