表題番号:2013B-094 日付:2014/03/02
研究課題尤度比の高速最適化と実データアルゴリズムとの整合に関する研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 松山 泰男
研究成果概要
スマートフォンに代表される高度な情報処理機器は著しく安価になり、市民のだれもが簡単に、そして大量のディジタル情報を生成して蓄積できる時代になっている。それに加えて、各人の日常行動のあらゆる局面が無意識のうちにデータとして蓄積されることも起きており、いわゆるビッグデータの時代に突入している。
このような状況では、次のような項目が新たな問題となる。
ビッグデータはその巨大さのために、ラベル化(構造化)を完全に行うことはできない。単に部分的にのみ可能である。
部分的にとはいえ、人手で作業できるサイズではない。
ユーザーすなわち一般的な市民が付けたラベルは単に個人的なものであり、汎用にできるかどうか疑わしいものが数多く存在する。
このような状況に突入している今日、機械学習の手法を利用して巨大なデータの構造化を推進すること、すなわちデータにソフトラベルを付加することは、非常に重要な課題になっている。そこで、本研究では次の3点を主項目とした。
(1)尤度を最適化することにより、データ集合にソフトラベルとしての相互の位置関係、すなわち位相を与えることを行う。ここでいう尤度とは、最適化の対象となる確率的関数を意味している。ただし、データそのものは取得された実際の値、すなわち統計的な見本値である。
(2)その時、高速化の手法を得る。
(3)この手法を実際のデータに適用し、斬新なグラフィカルユーザーインターフェース(GUI)を作成する。
 以上のような問題設定を行い、この研究により次のような成果を得ることができた。
(a)データの相互位置を球面に配置するとき、その弦を距離として尤度を構成し、これにより球面上にデータを配置できる尤度関数を構成した。そして、これを勾配法で最適化することにより、球面GUIを構成する方法を得た。
(b)さらに、尤度比の最適化に相当する形の高速化法を得た。
(c)ソフトラベル化の手法としては、期待値最大化アルゴリズムとそのサブクラスである隠れマルコフモデル化法が幅広く役立つ方法であるが、それらに対して対数を一般化した関数を用い、その曲率を自動的に利用するアルゴリズムを確立した。
(d)上記の(a)と(b)の手法を、全録テレビ番組をアイコンとして表示するGUIと、複数の被験者からの脳信号を配置するGUIを、多層球面として実現した。
 この研究は、以上のような成果を得て完了した。