表題番号:2013B-087 日付:2014/04/23
研究課題時系列解析における縮小推定量の研究
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 教授 谷口 正信
研究成果概要
独立標本での縮小推定量の研究には歴史があり、多様な研究がなされてきた。従属標本の統計解析である時系列解析では、縮小推定量の研究は端緒についたばかりと言える。本研究では、p 次の自己回帰モデルの自己回帰係数の推定に於いて縮小推定量を提案した。従来は、最小2乗推定量や疑似最尤推定量で推測されてきた。本研究の前半では、提案した縮小推定量と従来の最小2乗推定量の平均2乗誤差(MSE)を比較して、MSE の意味で縮小推定量が最小2乗推定量を改善する条件を求めた。 また縮小係数に未知量が入るので、これを推測した推定量のよさも調べた。数値的には、自己回帰過程が単位根過程から離れるにつれて縮小推定量が最小2乗推定量を、よりよく改善することを見た。
本研究の後半では、定常時系列の予測に縮小型予測子を導入した。定常過程の最適線形予測子は、そのスペクトル密度関数が既知であれば、完全に特定される。実際にはスペクトル密度関数は観測系列から推測されるので、誤特定化が常に起こっている。誤特定されたスペクトル密度関数から形式的に求めた最適予測子( misspecified best predictor) の予測誤差は、すでに評価されている。本研究では、この状況で、misspecified best predictor の縮小予測子を提案した。この縮小予測子の予測誤差を評価して、これが missecified best predictor のそれを改善する条件をもとめた。また、この縮小予測子は縮小係数に期待値を含むので、これの標本バージョンを構成し、この縮小予測子のよさを議論した。自己回帰モデルで縮小予測子の動きを数値的にみても、従来型の予測子を改善していることを見た。
従属標本に対する縮小推定、縮小予測子の研究は、端緒についたばかりであるが、従来の推定量、予測子を改善しており、更なる展開が必要となろう。近年、金融時系列解析が理論、応用ともに発展してきており、縮小推定論を、非線形時系列モデル、非定常時系列モデルの未知指標の推測に展開する必要があろう。この課題も、上記の基礎結果が、よい指針を与えよう。