表題番号:2013B-085 日付:2014/04/09
研究課題代数的シンプレクティック幾何における退化についての諸問題
研究者所属(当時) 資格 氏名
(代表者) 理工学術院 准教授 永井 保成
研究成果概要
代数的シンプレクティック多様体の退化の問題を主たる興味の対象として研究を行った.代数的シンプレクティック多様体の退化は,代数的シンプレクティック形式を持つ曲面の退化族の相対的なヒルベルト概形を考えることによって得られる.特に,元の曲面の退化族が半安定である場合,対応するヒルベルト概形の退化族も類似のマイルドな退化になっていることが期待できる.しかし,このようにして得られるヒルベルト概形の退化はそのままでは半安定にはならないことがわかる.現れる特異点は高次元の双有理幾何学との関連を示唆している.双有理幾何学的な観点から見ると,曲面の退化族の相対的な対称積はヒルベルト概形の双有理収縮として得られる代数的シンプレクティック多様体の退化族であり,こちらは対称群の作用による商として現れることから,見方によってはヒルベルト概形よりも捉えやすい対象である.そこで,代数的シンプレクティック曲面の半安定退化に対してその相対的対称積について考察し,その双有理改変について明示的な方法で研究を行った.特に,対称積の次数が2および3の場合についてはトーリック幾何などを用いた計算手法を用いることでそのQ-分解的端末化を具体的にひとつ構成し,さらに対称積上の双有理改変として相対的ヒルベルト概形をえるプロセスを明示的に構成した.
 これらの成果については,2013年10月に行われた国際研究集会「Symmetric products of semi-stable degeneration of surfaces, Yasunari Nagai, Symplectic Algebraic Geometry, (於 関西セミナーハウス, 京都)」および「5th Algebraic Geometry in East Asia,(於 Academy of mathematics and systems science, Chinese Academy of Sciences,中国,北京)」の招待講演において発表した.
 より次数が高い場合の対称積のQ-分解的端末化の構成問題とその双有理幾何に関する問題は対称群が複雑になるにつれその商として得られる多様体の特異点の構造が複雑になることから,より精密な研究が必要となる.これらについては2014年度より採択された科研費・若手研究(B)・26800025「既約シンプレクティック多様体の退化」において継続する予定であり,まとまった成果が得られ次第出版したいと考えている.